【防水工事の改修】かぶせ工法と撤去工法の違いを解説!!

更新日:2024年7月10日 BY 福島 慎介
かぶせと撤去工法との違い

改修防水工法の選定にはかぶせ工法撤去工法の2種類があります。
この2種類の工法を、どのように選定したらよいのか知っていますか?

知らずに選定してしまった場合、しっかりとした防水対策ができず、劣化症状や雨漏りが発生し、後悔してしまうこともあります。

本記事では、「かぶせ工法」と「撤去工法」の特徴や選び方などを、防水工事アドバイザーの福島が詳しく解説していきます。

この記事の監修者
福島 慎介
福島 慎介

神奈川県出身 一般社団法人 防水工事推進協会 代表理事 防水アドバイザーとして12,000枚以上の見積りや防水工事を診断 お客様の立場・視点から分かりやすくお伝えします。

防災工事推進協会 代表理事 紹介ページへ

防水工事のもっと基礎的な知識について知りたい方は防水工事とは?の記事をご覧くださいませ。

防水工事とは?工事の種類・耐用年数・単価まで徹底解説
かぶせ工法(膨れ) かぶせ工法(施工後)

改修防水工事工法のひとつにかぶせ工法があります。
かぶせ工法とは、防水層の痛んでいる部分のみを撤去して、部分的に下地の調整をおこないながら新しい防水層を入れていく工法です。

既存の防水層を残す形の工法で、 工期も短くローコストで仕上げられるのが特徴。
日常生活の事例におきかえるならば「虫歯の軽度な治療」と同じ、そのように考えておけば分かりやすいのではないでしょうか。

虫歯の軽度な治療も、既存の歯を残したまま虫歯になった部分を削り、薬や下地調整しながら新しいものを入れていきます。
比較的、軽度の改修で済む工法が「かぶせ工法」です。

かぶせ工法の特徴

かぶせ工法の特徴

既存の防水層の撤去を最低限にとどめます。 大部分を残し、その上から新たな防水層を形成する のが、かぶせ工法の特徴です。撤去を最低限にとどめるため、工事期間を短縮できることも大きな特徴のひとつになります。

しかし既存の防水層と新規防水層の素材相性や状態の悪さによって、新規の防水層をかぶせることのできない問題点もあります。

もうひとつの、改修防水工事工法は撤去工法です。
撤去工法とは、 既存の防水層をすべて引き剥がして作業をします。
防水層を引き剥がし
たあと、きれいにしてから下地処理をゼロから施し、防水層を施工していく作業です。

1から防水層の工事が行えるため、防水層の種類が選び直せます。
こちらは、虫歯の治療に例えた場合「歯の入れ替え治療」と考えておけば分かりやすいです。

「歯の入れ替え治療」は、悪くなった歯を根元から抜き、その場所をきれいに整えてから、差し歯や入れ歯を入れていきます。
このように、つくり直していく工法が「撤去工法」です。

撤去工法の特徴

撤去工法の大きな特徴は、 既存の防水層を完全に撤去し、そのうえで新たな防水層を形成 する点です。
1から防水層の工事をやり直せます。防水層の種類を自由に選べるため、何度か防水工事をしたのに効果があまり見られないという方は、1から防水層の工事をやりなおせる「撤去工法」がおすすめです。

しかし費用や時間がかかることや、騒音や振動が発生して近隣トラブルになる可能性もあるので注意が必要となります。

かぶせ工法メリット・デメリット

かぶせ工法のメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット デメリット
コストかからない 雨漏りしている場合は向かない
工期が短い 重量がかさむ
産業廃棄物が少ない 防水効果が維持出来ないときもある
二重防水効果が期待できる 下地の状態が悪いと施工できない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

かぶせ工法のメリット

比較的 軽度の施工で終わる のが、かぶせ工法の特徴です。
かぶせ工法は、既存の防水層を残して悪い部分のみ施工していくため、工事費用が安く済むことがあげられます。

工期も短い期間で終わり、産業廃棄物の量が少量で済みます。
そのため工事費用や産廃費用が削減でき、ローコストで施工できるのです。

そのほか、既存の防水層を残し新規の防水層を被せていくため、2重の防水効果が期待できるというメリットもあります。

かぶせ工法のデメリット

かぶせ工法のデメリットは、使用できる施工材料が限られてしまう点があげられます。
主な素材は、ウレタン・アスファルト・FRP・塩化ビニールの4種類がありますが、それ以外の素材ではうまく防水層が被せられません。

また下地や防水層の状態が悪い場合、 防水効果が長続きしない
ことや施工出来ないこともあります。

そのほか、2重の防水層で重量が重くなる点はデメリットの部分です。

撤去工法メリット・デメリット

撤去工法のメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット デメリット
雨漏りを根本的に解決できる 産廃費などコストがかかる
防水層の種類を選べる 工期が長い
新築同様の下地処理が施せる 騒音問題がある
防水効果が長期間期待できる 撤去後仮防水が必要

詳しく見ていきましょう。

撤去工法のメリット

ウレタン防水層の撤去作業の動画

撤去工法の最大のメリットは、 既存の防水層をすべて撤去 し、新築同様の下処理が施せるところにあります。

施工を最初からやり直せるため、防水層の種類を自由に選び直せるのもメリットです。
下地処理や防水層の種類をしっかり選んでおくことで、防水効果が長期間期待できるのもに仕上がります。

撤去工法のデメリット

すべて撤去したうえで施工をやり直すため、 工事費用や産廃費用がかさみ コストがかかることが、撤去工法のデメリットでしょう。

既存の防水層を撤去する際、作業の振動や騒音などにより、近隣トラブルに繋がる場合もあるため注意が必要です。

またかぶせ工法と比較すると、工期が長くなります。計画的な改修を考えている人は、完成にどのくらいかかるか確認しておきましょう。

防水層を撤去するときは下地がむき出しになるため、必ず 仮防水が必要 です。
撤去後に仮防水をしていないと、天候により雨は入ってしまいます。

撤去後の仮防水提案をしてくれる業者は、専門性があると考えておくとよいでしょう。
トラブルの際、工事保険に加入している業者にお願いすると安心です。

改修工法を選ぶ際「どのようなことを基準に工法を選んだらよいのか」という部分は、迷う人が多い部分です。
これからかぶせ工法撤去工法の選び方基準を紹介していきます。

防水層を再利用できるならかぶせ工法がおすすめ

かぶせ工法がおすすめな場合は、 防水層の再利用ができる状態 にあるということが条件です。

既存の防水層で傷んでいる部分のみを撤去または修繕し、新規の防水層を形成していきます。そのため既存の防水層が再利用できる状態でなくてはならないのです。

既存の防水層と新規の防水層の相性も重要になります。専門知識をもった防水工事業者に既存の防水層の種類を確認することをおすすめします。
また、かぶせ工法は2重防水層になり耐震性の低下につながるため、1回しかおこなえません。この条件がクリアできればローコストで行える「かぶせ工法」がおすすめです。

くり返しの雨漏りには撤去工法がおすすめ

防水層など下地の状態が悪い場合は「撤去工法」がおすすめです。状態が悪い防水層では、改修工事をしたあとも、くり返し雨漏りしてしまうからです。

また、3回目の防水工事をかぶせ工法にするか撤去工法にするかは、防水工法や既存の防水層、築年数により異なります。3回目の防水工事は撤去工法が行われることがほとんどです。材料メーカーやハウスメーカー(ヘーベル・積水ハウスなど)などにより見解は様々です。

工法では、塩ビシート機械固定の場合、以下の条件であれば3回目のかぶせ工法による改修工事も可能です。

  • RC造の建物
  • 鉄骨造やALCの場合、建てた建築メーカーまたは防水の材料メーカーの確認
  • デスク盤の位置を考慮すること

アルファルト防水の場合は、3回目になると材料の重量が重く、建物に不可がかかるとされており、3回目は推奨されていません。最終的には、既存防水層の状態、築年数などを考慮し可能かどうか可否の決断をすることになります。3回目の塩ビシート機械固定工法ができない場合は、撤去工法を選ぶことになります。

実際、撤去工法は、長い期間防水効果が期待できるため「10年以上防水効果をもたせたい」と思っている方にもおすすめです。

実際に防水工事で失敗した人は、雨の音がするたびに怖く雨が降るたびに後悔します。ベランダを見るたびに思い出したり、雨が嫌いになったりした方もいらっしゃいます。

頻繁にやる工事ではないので、失敗したくないし後悔したくないですよね。
防水工事を失敗しないよう下記を参考にしてください。

専門知識のない業者に依頼する

自分でホームページを見て探した業者は、本当に防水専門業者でしょうか。
47万社もあることをご存知ですか?
本当に防水工事をやっているか分からないですよね。

建設許可書を持っているのは、2022年で時点で47.5万(国土交通省資料
個人事業主を含めると60万を超えています。
その中から、専門業者を見つけることはかなり難しいことです。

お客さまも、数十年に1回の工事なので経験が少ないため、選んだ業者が本当に専門知識を持っている業者なのか、判別するのも難しいことなのです。

また専門外の業者も悪気があるわけではありませんが、数十年に1回の工事なので経験値を積めないという部分で専門的な作業が行えない場合もあります。

その点防水専門業者は、防水工事を年に何十件もやっており、経験値が違うためお客様の要望に答え、満足のいく工事ができるのです。

知り合いの業者にお願いしてしまった

管理会社に紹介された、地元の友達の紹介の場合、トラブルがあっても知り合いだと言いづらいなどがあります。

ご近所や知り合いの業者にお願いして失敗したという事例もあります。
自宅を建てた大工さんや、近所の塗装業者さん、リフォーム会社に勤めている同級生など、住宅に関係する職についている知り合いはたくさんいます。

しかし、その「知り合い」が専門職ではなかったため、しっかりした工事が出来ずトラブルに発展することもあります。
水漏れが直っていなかった場合でも、 知り合いであるため泣き寝入り してしまうこともある
のです。

値段だけで業者に競い合わせると失敗する

誰しも値段を押さえたいのは分かります。
見積もり金額だけを業者に競い合わせると、どこの業者も選んでもらいため無理難題に答えないといけなくなります。その結果手抜き工事になってしまう場合があるのです。

色々な業者に値段だけで競わせると、業者も赤字になります。
業者にしわ寄せがきてしまうため、業者も手抜き工事をせざる終えなくなります。

過度な値引き交渉をしないこと が失敗を防ぐ重要なポイントになります。
また、業者は「他の業者にも同じことを言っているな」と分かっていますので、もし値引き交渉をするなら、依頼する業者を確実に定めてから交渉をすることをおすすめします。

かぶせ工法・撤去工法を施工する時の防水工事は専門業者に依頼するようにしましょう。かぶせ工法と撤去工法のどちらを選択するかの判断は、専門家ではないと難しい場合があります。

「信頼できる専門業者の見分け方」をまとめましたので、参考にしてください。

防水工事専門業者の7つの特徴

  1. 10年以上続いている防水工事業者
  2. 「自社保証」と「メーカー保証」のW保証が10年間出せる業者
  3. 複数工法を提案してくれる
  4. 10人以下の小規模業者
  5. 自社の職人さんが施工してくれること
  6. 防水施工技能士1級を持っている従業員がいる業者
  7. 工事後のアフターフォローや定期点検をおこなっている業者

1つずつ解説します。

10年以上続いている防水工事業者

10年以上続いているだけでも、お客様から信頼されている可能性は高くなります。5年10年でメンテナンスや改修工事が行われますので、10年以上続いていることは一定のリピーターのお客様もいる業者です。

「自社保証」と「メーカー保証」のW保証が10年間出せる業者

10年以上続いている防水工事業者は、10年に渡る実績もあり信頼できる業者といえます。 10年間の保証してくれる業者は信頼できるでしょう。

複数工法を提案してくれる

防水工事において「すべての工法」が提案できる業者はおすすめです。改修工法が1選択であったり、選んだ工法を断る業者は疑ってかかりましょう。

10人以下の小規模事業者

ここは評価が分かれるポイントでもありますが、大手メーカーなどは、下請けに任せてしまうため作業工程の把握がしきれないこともあります。10人以下の小規模業者では、すべての作業工程を小規模で行うため、目がいきとどき安心です。また、防水工事の場合、技術が大切であり、少数精鋭の場合、技術力があり信頼できる職人さんが多いのも事実です。

自社の職人さんが施工してくれること

自社の職人さんがいる場合、下請け業者に任せることがないため、 最後まで責任をもって仕事をこなしてくれます。中間マージンも発生しないので、適正価格で依頼ができるのです。要望などを直接伝えることができ、伝達不足も解消されます。

防水施工技能士1級を持っている従業員がいる業者

防水施工技能士とは、 防水工事の施工技術を認定する国家資格で、各都道府県の職業開発能力協会が実施する技能検定の合格者に与えられる資格になります。1級と2級がありますが、1級は上級技能者です。これを持っている従業員がいることで信頼性が高い業者と判断できます。

工事後のアフターフォローや定期点検をおこなっている業者

工事後のアフターフォローや定期点検を実施している業者は信頼性が高く、安心出来ます。工事が終わればそのまま顔も出さない業者もあるため注意が必要です。アフターフォローや定期点検について、パンフレットなどに記載がない場合は、問い合わせや相談する際にさりげなく聞いてみましょう。

本記事ではこの2種類の工法についての特徴やメリット・デメリットについて紹介してきました。

また工法の選び方について「どちらの工法を選んだらよいのか」悩んだ場合は、既存の下地の状態や雨漏り状況などで判断していきましょう。

工法の判断に困った場合は、防水専門家の意見を聞いてみることも「選択肢のひとつ」ではないでしょうか。

防水工事の専門のアドバイザーにご相談ください。
問い合わせフォーム、又はお電話にてお気軽にご相談ください。
相談料は頂いておりません。

カテゴリー :防水工事全般  タグ:工法 改修