シート防水とは?特徴とメリット・デメリットを防水工事の専門家が解説!

更新日:2024年8月18日 BY 福島 慎介

防水工事の工法の中でも、ウレタン防水に次いで多く採用されているのがシート防水です。

シートの種類や、工法によって特徴や、メリット・デメリットの違いがあります。

この記事では、防水アドバイザーの福島がシート防水の特徴とメリット・デメリットを詳しく解説します。

この記事の監修者
福島 慎介
福島 慎介

神奈川県出身 一般社団法人 防水工事推進協会 代表理事 防水アドバイザーとして12,000枚以上の見積りや防水工事を診断 お客様の立場・視点から分かりやすくお伝えします。

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シート防水の写真
<シート防水の様子>

シート防水は、屋上の下地に塩化ビニールや合成ゴムのシートを敷き一体化させることで、建物へ雨水や湿気の侵入を防ぐ防水工法です。

広い面積でも一度に防水処理ができるので、屋上や陸屋根に採用されることが多い工法です。

防水効果を発揮するには、シートのつなぎ目や端を隙間なく接着する必要があり、防水工事の技術力も必要とされます。

塩ビシート(塩化ビニールシート)は耐久性に優れ耐用年数が長く、ウレタン防水とは異なり、メンテナンスの手間が少ないのため、人気のある工法です。

シート防水の工法
<塩ビシート防水の工法>

シート防水の工法は以下の2つの工法があり、施工する場所や予算により採用する工法が変わります。

  • 接着工法
  • 機械固定工法

この2つの工法をベースにし、主に塩ビシートかゴムシートを貼り付けていきます。

まずはこれら2つの工法の違いを解説していきます。

接着工法

塩ビシートを貼り付ける工程
<塩ビシートを貼り付ける工程>
接着工法の断面図
<接着工法の断面図>

防水シートを専用の接着剤で貼り付ける工法です。

下地が平らでないと施工が難しい場合があります。

下地の撤去がなく、作業工程もシンプルなため、比較的短い工期で仕上がります。

下地を撤去しないため、改修工事に向いていますが、通気性がないため雨漏りしている場合は、不向きです。

工事の際は下地の水分を十分に乾燥させてからシートを貼りつけることで、雨漏りを回避できます。

ベランダ防水や新築時の屋上防水で採用されることが多いです。

ある程度の強度を有することから軽歩行程度の用途に適応できます。

機械固定工法

専用のディスク板をビスで固定する工程
<専用のディスク板をビスで固定する工程>
機械固定法の断面図
<機械固定法の断面図>

シート防水の機械固定工法は、専用の機械でシートを固定する方法です。

シートと施工箇所の間に通気緩衝シートとディスク盤を設置し、水蒸気を逃がせる隙間を作ります。既に漏水が発生している箇所にも施工が可能です。

下地に絶縁マットを敷くことで、雨で下地が濡れている箇所にも施工可能です。

また、シートが躯体に直接接合しないため、亀裂や振動の影響を受けにくく、改修工事にも適しています。

下地の撤去や調整が不要で、広い屋上(陸屋根)に最適です。

溶着剤や熱風で瞬時に接合し、長期間の防水効果を保つことができるので、人気の工法です。

シート防水は近年シェアを伸ばしている人気の工法で、耐用年数が長く、メンテナンスの手間も少ないなど多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあり採用が見送られる場合があります。


ここではシート防水メリット・デメリットについて解説します。

シート防水のメリット

シート防水のなかでも、塩ビシート防水の最大のメリットは、耐用年数が長く、メンテナンスの手間が少ないことです。

  • 施工が簡単
  • 高い防水性能
  • 耐用年数が長い
  • メンテナンスの手間が少ない

塩ビシートの耐久年数は12年~18年ほどです。

加硫ゴムシート防水の耐久性に関しては10年~12年ほどです。

加硫ゴムシート防水は、5〜8年ごとにトップコートの塗り直しのメンテナンスが必要です。

それぞれのメリットについて、説明します。

施工が簡単

シート防水は比較的施工が簡単で、短期間で完成します。

施工時間が短縮できるため、工事費用も抑えられることが多いです。

高い防水性能

防水シートは非常に優れた防水性能を持っています。

シート自体が防水材であるため、一度施工すれば長期間にわたり効果を発揮します。

耐用年数が長い

シート防水は耐久性が高く、長期間にわたり効果を発揮するため、メンテナンスの頻度を減らすことができます。

適切に施工されれば、20年以上の耐用年数を持つ場合もあります。

メンテナンスの手間が少ない(塩ビシート防水のみ)

一度施工した後は、トップコートの塗り直しなどのメンテナンスがほとんど不要で、シートのつなぎ目の補修が必要になります。トップコートのメンテナンスより手間がかかりません。

これにより、長期間にわたって防水性能を維持することができます。

シート防水のデメリット

シート防水のデメリットは、複雑な形状の箇所には不向きなことと、初期コストが高めなことです。

  • 施工方法の難しさ
  • 初期コストが高め
  • 施工のリスク

施工方法の難しさ

防水工事の中でも1番技術を要する工法です。

複雑な形状の場所では困難です。

凹凸のある場所等、シートを貼りにくい箇所への施工は困難なため、基本的に平らな面に施工します。

初期コストが高め

質の高い防水シートの使用や機械固定法などの防水効果が高い工法を採用する場合、ウレタン防水と比較しても初期コストが高くなることがあります。

ただし、メンテナンスがフリーであることや、長期間にわたる防水効果を考えれば、長い目で見てコストパフォーマンスが良いといえます。

施工のリスク

塩ビシートの施工には専門的な技術が必要です。

特に接着剤の使用方法やシートの接合部の処理など、正確な施工手順を守らなければ、防水性能が損なわれる可能性があります。

また接着面の状態や環境条件(温度や湿度)にも影響を受けやすいため、経験豊富な職人に依頼することが重要です。

ハウスメーカーが得意な業者に依頼すると失敗がありません。

シート素材ごとのメリット・デメリット、価格や特徴は以下の通りです。

塩化ビニル系シート
(塩ビシート)
加硫ゴム系シート
特徴防水工法の中でも最も耐久性が長い工法の1つ
既存の防水がどのような種類であっても被せることが可能
初期コストが安く工事も比較的容易なので工期が短い
塩ビシートに比べると耐久性が弱いため、最近は採用されていない
メリット耐用年数が長い
施工後のメンテナンスが不要
雨漏り・地震の揺れに強い
コストが安い
柔軟性があるので地震の揺れに強い
施工の簡便さ
デメリット初期コストが高い
専門的な施工技術が必要
複雑な形状には施工が難しい
加工が難しい
塩ビシートに比べると耐久性が短い
メンテナンス費用がかかる
価格6,500~7,500円5,000円~6,000円

シート防水の単価について詳しく知りたい方は、「シート防水の単価と特徴」をご参照ください。

シート素材ごとのメリット・デメリットをより詳しく解説していきます。

塩ビシート防水(塩化ビニル系シート)のメリット・デメリット

塩化ビニル系シート(塩ビシート)
<塩化ビニル系シート(塩ビシート)>

塩ビシート防水とは、ポリ塩化ビニルで作れているシートを貼る工法で、太陽の紫外線や雨に強く、長寿命で工事後のメンテナンスも必要がないのも特徴です。

建物の形状にシートカットしたり、デスク盤取付や溶着作業などもあるため、最も技術を要する工法と言われています。

工事中は天候にも左右されにくいため工期も短く、シート防水の中では主流の防水工法です。

メリット・デメリットを詳しく解説していきます。

メリット

〇耐用年数が長い

塩化ビニール系シートは非常に耐久性が高く、約15~20年にわたって長期間使用することができます。

〇施工後のメンテナンスが不要

塩化ビニル系シートは耐久性が長く、ウレタン防水と比べてトップコートなどのメンテナンスが不必要なため、メンテナンス費用が抑えられます。

〇雨漏り・地震の揺れに強い

塩化ビニル系シートは耐候性が高く、柔軟性があるため、雨漏りや建物の揺れに強いです。

シートが裂けたり剥がれたりするリスクが低くなり、防水性能が長期間維持されます。

デメリット

〇初期コストが高い

高品質な塩化ビニル系シートは初期コストが高めです。

ただし、長期間の耐久性を考慮すれば、総合的なコストパフォーマンスは良いといえます。

〇専門的な施工技術が必要

施工には専門的な技術と知識が必要です。

適切に施工されないと、継ぎ目や接合部からの漏水リスクが高まります。

専門的な施工技術が必要なため塩ビシートを得意とする職人が少ないので、人件費が高くなる傾向になります。

〇複雑な形状には施工が難しい

既存のシートを貼り合わせて施工するため、複雑な箇所には向きません。

例)

  • 屋根の隅
  • 高低差のある箇所
  • 配管の周り
  • 室外機がたくさん載っている箇所
  • 太陽光パネルが乗っている箇所 など
複雑な形状の事例
<複雑な形状の事例>

ゴムシート防水(合成ゴム系シート)のメリット・デメリット

加硫ゴムシート
<加硫ゴムシート>

ゴムシート防水とは、合成ゴムに加硫剤や加硫促進剤を加えたシートを張り付けていく工法です。

引張強度や伸びに優れ、下地の揺れや動きに対する追従性に優れています。

他の工法に比べ初期費用も安いのも特徴です。

但し最近は塩ビシートのほうが耐久性も長いという理由で、加硫ゴムシート防水は採用されにくくなってきました。しかし、シート素材の進化により、再び注目を浴びてきています。

加硫ゴムシートならではの強みと特徴もあります。メリット・デメリットを紹介します。

メリット

〇コストが安い

塩ビシート、アスファルトシートに比べて加硫ゴムシートは1番材料費が安いです。

防水工事の種類耐用年数工法価格
塩ビシート防水機械固定法15~18年程度6,500~7,500円
塩ビシート防水密着工法12年~15年程度6,000~7,000円
加硫ゴムシート防水10~12年程度
(5~8年毎にメンテナンスが必要)
5,000~6,000円

〇柔軟性があるので地震の揺れに強い

伸縮性が高いため、建物の動きや温度変化に対しても柔軟に対応できます。

これにより、ひび割れや破損を防ぐことができます。

〇施工の簡便さ

施工が比較的簡単で、工期が短縮できます。

これにより、工事費用を抑えることができる場合があります。

デメリット

〇加工が難しい

合成ゴム系シートは、シートの厚みや硬度が高いため、切断や成形が困難です。

〇塩ビシートに比べると耐久性が短い

紫外線や温度差による膨張・収縮が限定的なため、温度差が大きい環境ではシートの劣化が早まることがあります。(10~12年)

〇メンテナンス費用がかかる

加硫ゴムシートは5〜8年の間にトップコートの塗り直しが必要です。

その際の費用は1㎡あたり2000円以上トップコートの費用がかかります。

シート防水とウレタン防水の違い
<シート防水とウレタン防水の違い>

シート防水とウレタン防水はどちらも優れた防水工法ですが、絶対的にどちらが良いか言い切ることはできません。

それぞれ特徴が異なり、建物の構造や下地の状態、予算、中長期的にかかるメンテナンスへの対応などの要素を確認し

それぞれ特徴が異なり、建物の構造や下地の状態、予算、中長期的にかかるメンテナンスへの対応などの要素を確認した上で、採用を決定していきます。

ウレタン防水とシート防水を単純比較すると、下記の通りになります。

シート防水ウレタン防水(塗膜防水)
特徴塩化ビニール、アスファルト、ゴム製のシートを貼り付ける工法。
シートを一体化することで防水効果を発揮する
液体状の樹脂を塗り重ねて防水層を形成する工法。
最も施工がしやすい防水材料
耐久年数10~18年10年~15年
オススメの施工場所屋上・屋根・バルコニー面積が広い場所屋上・バルコニー・外階段・廊下複雑な部位がある場所
オススメの構造ハウスメーカー(ALC造)鉄骨RC 面積が広い場所複雑な部位がない屋上RC木造鉄骨基本どんなところでも施工可能
技術の有無★★★★★★★★☆☆
※ウレタン通気緩衝工法は★5

シート防水の特徴

  • 広い面積でも一度に防水処理ができる
  • 耐久年数が最も長い
  • シートとシートのジョイントの隙間が無いように注意しながら施工する必要がある
  • 固定の均一性の確保
  • 防水工法の中でも最も技術を要する工法
  • 複雑な形状への対応

防水工法の中でも最も技術を要する工法については、とても重要なため、詳しくは次の章でご説明します。

ウレタン防水(塗膜防水)の特徴

  • 継ぎ目がなく、細かい場所も工事しやすい
  • 複雑な形状(架台、笠木など)の場所にも施工しやすい
  • 軽量で建物に負担をかけにくい
  • 初期コストを抑えることができる
  • 一部補修がしやすい
  • 建物生涯コストが最も安い

また、ウレタン防水と塩ビシート防水の違いについては、こちらをご参照ください。

以上の特徴を加味しながら、建物とご自身の希望を元に決定していくことになります。

最も技術を要する塩ビシート防水の施工
<最も技術を要する塩ビシート防水の施工>

防水工事の技術力も必要とされるシート防水ですが、施工の難しさについて、解説していきます。

  • 複雑な形状への対応
  • 接合部の処理
  • 施工場所に合わせたビスの選定

それぞれについて説明します。

複雑な形状への対応

屋上やバルコニー、窓周りや排水口など、細かい部分のシートの切り込みや折り込みが精確である必要があります。

複雑な形状や隅の部分にシートを正確に貼り付けるのは難しいです。

シートをカットし、折り込んで密着させるためには高度な技術が必要です。

接合部の処理

シートのつなぎ目や端部の処理が完璧でないと、漏水のリスクが高まります。

接合部の処理には専門的な技術と経験が求められます。

施工場所に合わせたビスの選定

塩ビシート機械固定法では、適切な長さのビスを使用することでしっかりと固定され、安定した防水層が形成されます。

ビスをポイントは、以下の通りです。

  • 下地の種類と厚さ
  • 固定力
  • 施工環境

下地のALC板の厚みがある、3回目の塩ビシートの工事の時など、状況に応じてビスの長さを変えます。

通常80mmのビスを使いますが、設計書や現場の下地の状況を見ながら選定します。

塩ビシート防水で使われる実際のビス
<塩ビシート防水で使われる実際のビス>

施工に関してもビスが適切な間隔で配置されていないと、シートが均一に固定されず、浮きやたわみが生じる可能性があります。

設計図や施工ガイドラインに従って、正確に配置することが求められます。

技術力のある業者のみが出来る塩ビシート機械固定法
<技術力のある業者のみが出来る塩ビシート機械固定法>

先述したように、シート防水で防水効果を発揮するには、シートのつなぎ目や端を隙間なく接着する必要があり、防水工事の技術力も必要とされます。

塩ビシート防水のできる技術力のある優良な業者は、沢山いる防水業者の中でも数が限られています。

防水工事見積もり.comでは、シート防水を得意とする、技術力のある防水専門業者を紹介しています。

防水工事アドバイザーの福島までお気軽にお問合せください。

カテゴリー :シート防水  タグ:シート防水 メリットデメリット 塩ビシート