屋上防水工事の耐用年数はどのくらい?防水工法ごとの耐用年数を一覧表で紹介!

更新日:2024年8月12日 BY 福島 慎介
屋上防水の耐用年数はどのくらい?

屋上防水工事には、防水工事の種類ごとに耐用年数があり、耐用年数が過ぎる雨漏りリスクが急激に上がります。

適切なタイミングで屋上防水工事を行うことで、建物の耐用年数を伸ばし、資産価値を維持することができます。

今回は屋上防水の耐用年数について防水工事アドバイザーの福島が、比較表を用いて詳しく解説します。

この記事の監修者
福島 慎介
福島 慎介

神奈川県出身 一般社団法人 防水工事推進協会 代表理事 防水アドバイザーとして12,000枚以上の見積りや防水工事を診断 お客様の立場・視点から分かりやすくお伝えします。

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屋上防水施工後
<屋上防水はマンション・ビルの劣化を防ぎ資産価値を維持するために重要>

日本では、マンションやビルの法定耐用年数は47年と定められています。

実際には多くの建物がこの期間を遥かに超えても、その資産価値を維持しています。
但し、建物の資産価値の維持には、屋上防水の状態が重要な役割を果たします。

屋上の防水性能が低下すると、水漏れにより建物の鉄筋コンクリート構造に損傷を与える可能性があります。
特に、鉄筋コンクリートは、木造建築と比較して水に対する耐性が高いとされていますが、経年劣化により防水機能が低下し、雨漏りのリスクが高まります。

屋上の防水状態が良好であれば、建物内部への水の侵入を防ぎ、鉄筋の腐食やコンクリートの劣化を最小限に抑えることができます。

屋上の防水工法ごとの耐用年数とメンテナンス頻度は以下の通りです。

防水工法耐用年数メンテナンス頻度
ウレタン防水通気緩衝工法13~15年5~8年毎にトップコートを塗る
ウレタン防水密着工法10年程度5~8年毎にトップコートを塗る
塩ビシート防水機械固定法15~18年15年間メンテナンスフリー
塩ビシート防水密着工法12~15年10年間上メンテンスフリー
改質アスファルトシート防水12~18年、最大80年5~8年毎にメンテナンスが必要
FRP防水10~12年5~8年毎にトップコートを塗る

最も耐用年数が短いのは、ウレタン防水密着工法です。

塩ビシート防水機械固定法と改質アスファルトシート防水は、耐用年数が最も長くなっています。

塩ビシート防水機械固定法はメンテナンス不要という利点を加味すると、最も優秀な工法とも言えるでしょう。

ウレタン防水の耐用年数は10年~15年

ウレタン防水の耐用年数
<ウレタン防水の耐用年数>

ウレタン防水の耐用年数は、ウレタン防水通気緩衝工法と密着工法では大きく異なります。ウレタン防水通気緩衝工法が13~15年に対し、ウレタン密着工法では10年程度となります。

ウレタン防水は、2023年時点で防水工事の採用率が最も多い工法(参照:ウレタン防水とは?)でありコストも安い特徴がありますが、耐用年数は他工法と比較しても短く、トップコートの塗り替えも必要になります。

ウレタン防水の劣化

ウレタン防水の劣化
<ウレタン防水の劣化>

ウレタン防水の防水層を劣化させる要因は、雨、紫外線、熱の3つです。
これに時間の経過が加わると、劣化は進んでいきます。
ウレタン防水層で特に多い劣化症状の1つはひびです。

ウレタン塗膜が劣化すると伸びが低下します。建物のコンクリートが乾燥や温度などによる体積の変化することで、微妙に動きが生じ、びび割れが発生します。

「コンクリートに荷重が作用しない場合でも変形すなわち体積変化が生じる。体積変化には、乾燥収縮自己収縮温度変化による体積変化がある。」引用:本コンクリート学

もう1つは浮き(膨らみ)ですが、雨水等でコンクリート内の水分が水蒸気となり、防水層が膨張することで生じます。
更に、防水層のひびや剥落により水分が入り込みやすくなり、浮きの症状が発生しやすくなります。

シート防水の耐用年数は12年~18年

<塩ビシート防水の耐用年数>

シート防水(塩ビシート)には機械固定法と密着工法があり、 建物の状況、施工場所、予算などによって採用したい工法も変わります。
機械固定法の方が耐用年数は長く、メンテナンスフリー期間も長いです。

塩ビシートは通常仕様高耐久仕様があります。

高耐久仕様にすると紫外線や熱による変化が少ないため、シートが切れにくく、紫外線や熱による変化が少ないので長期間維持が出来ます。

密着工法は通気性がなく、下地の影響を受ける工法です。
通気性がないと水分が外に逃がすことができず、浮き(膨れ)が生じることになります。

いっぽう、機械固定法は下地と密着をさせない絶縁工法である為、水蒸気を分散させることができ、浮きが発生することはありません。

シート防水の劣化

シート防水の劣化
<シート防水の劣化>

シート防水の劣化には主に4つの原因があり、それぞれの症状は以下の通りです。

  • 塩ビシートの劣化によるヒビ
  • 飛来物の衝撃や鳥による破れ
  • シート結合部分の施工不足により隙間ができる
  • 劣化などの原因で浮き(膨れ)が発生

塩ビシートの劣化によるヒビ

塩ビシートの劣化によるヒビ
<塩ビシートの劣化によりヒビ>

塩ビシート自体が劣化すると、ヒビが入ることがあります。
ヒビが入る仕組みはウレタン防水とは異なります。
塩ビシートは、可塑剤という材料を柔らかくする製剤を加え、シート状にしたものです。可塑剤は、時間の経過により蒸発するため、塩ビシートに柔軟性・弾力性が損なわれ、ヒビが入りやすくなります。

飛来物の衝撃や鳥による破れ

飛来物の衝撃や鳥による破れ
<飛来物の衝撃や鳥による破れ>

飛来物や鳥が嘴でつつく事で傷や穴が出きやすいのが、ゴムシート防水です。

同じシート防水の部類でも、塩ビシートは鳥害による破損はほとんどありません。
塩ビシートを開発しているアーキヤマデ株式会社の会報では45年に渡り鳥害の報告はゼロと公表をしています。
参考:https://marta.jp/wp_ogurakaizer/wp-content/uploads/2017/12/23%E4%BC%9A%E5%A0%B101.pdf

塩ビシートは鳥害はないとしても、厚みは1.5mm~2mmのため、重量があり尖ったものが当たれば破れる可能性があります。

シート結合部分の施工不足により隙間ができる

シート結合部分の施工不足による隙間
<シート結合部分の施工不足による隙間>

シート結合部分とシートの端は、施工が上手くないと劣化していった時に隙間ができるようになってしまいます。
隙間から雨水が入り込むと、シートの中で水分が溜まってしまいます。
それによりシートと下地の接着が弱くなり、シートが剥がれることになります。
このようにシート結合部分や端に隙間や剥がれがある場合は早期に修繕すべきです。

劣化などの原因で浮き(膨れ)が発生

シート劣化などの原因で浮き(膨れ)
<シート劣化などの原因で浮き(膨れ)>

シート防水における浮き(膨れ)は、ウレタン防水と同じく、建物の水分が水蒸気となり、浮きが生じます。
これは、密着工法において発生する劣化現象です。またシートに剥がれがあり、そこから水分が侵入し、接着が弱まることでシートがずれ、浮きに繋がることもあります。

改質アスファルトシート防水の耐用年数は12~18年・最大80年

改質アスファルト防水の耐用年数
<改質アスファルト防水の耐用年数>

例外ですが、アスファルト防水は、防水層を3重、4重と重ねることにより耐久性を高め、物理的な耐用年数を40年から最大80年まで想定して作られることもあります。

引用:https://www.thr.mlit.go.jp/Bumon/B00097/k00360/inhuramente/katudo/221220/seeds_0001.pdf

改質アスファルトシート防水の劣化

アスファルトの亀裂・ヒビ
<アスファルトの亀裂・ヒビ>

改質アスファルトシート防水の亀裂・ヒビの大きな要因は、気温の変化、地震や台風の建物の揺れ、日照時間などの影響によります。

当然、年数が経つにつれてダメージとなる要因を受けやすくなり、蓄積していくため、より防水層に亀裂や・ヒビが入りやすくなります。

シートにヒビが入り、雨が降ると水分が侵入します。
防水層の接着が弱まり、浮きにも繋がります。

屋上防水の耐用年数を伸ばすには、点検とメンテナンスを定期的に行うことが大切です。
ここでは5つの重要なポイントを紹介します。
屋上防水は、建物の耐用年数を伸ばし、資産価値を保つことに直結する重要な施工です。

定期的に点検を行う

点検をしている様子
<点検をしている様子>

定期的な点検と予防工事は、雨漏りを防ぐだけではなく、工事費用を抑えることにも繋がります。

一般的に雨漏りしてからの工事は「調査」「修繕」「防水工事」とステップ数が増えるため、見積もり価格も高くなってしまうのです。

定期点検を実施することで、上述のトップコートやジョイントシールの劣化、シートの浮きや剥がれなどにいち早く気がつき、早めの対処を実施することができます。

点検費用は、前回工事した業者であれば無償になる場合が多いです。
工事をしていない業者の点検費用の目安としては、「2〜3万円程度」、頻度は「5年に1度」くらいを推奨しています。

ひび割れ・膨れ・剥がれは素早く補修する

ひび割れ・膨れ・剥がれ 補修前補修後
<ひび割れ・膨れ・剥がれ 補修前・補修後>

屋上防水のヒビ割れ、膨れ、剥がれを発見したらすぐに補修しましょう。

これらの劣化症状があると、雨水が建物に侵入し、雨漏りの原因になりますし、防水層の劣化を進行させてしまいます。

トップコートの塗り直しをする

トップコートを塗りなおしている様子
<トップコートを塗りなおし>

メンテナンスにおいて最もメジャーなメンテナンスとしてはトップコートの塗り直しが挙げられます。

「ウレタン防水」「ゴムシート防水」「FRP防水」「アスファルト防水」の防水層の上にはトップコートと呼ばれるコーティングが施されています。「塩ビシート防水」はトップコートが必要ありません。

トップコートは、雨や風、紫外線から防水層を守る役割を担っているものです。

防水層の耐用年数が10年~18年であるのに対し、トップコートの寿命は5~10年ほどと短くなっています。トップコートが寿命になると、防水層がむき出しになってしまいます。

トップコートの種類は主に3種類あり、中でも、シリコントップコートとフッ素トップコートは10年くらいはメンテナンスもしなくても長持ちしやすくなるためオススメです。

「塩ビシート防水」トップコートの代わりにジョイントシールの注入が必要となります。(ジョイントシールとはシートとシートの繋ぎ目を接着している溶着剤を指します)

こちらも経年劣化で粘着力が低下するため、10年に一度補修を行っておくと安心です。

ドレンを掃除する

ドレンが詰まっている様子
<ドレンが詰まっている事例>

屋上の四隅に設置されている、ドレン(排水溝)の役割は、屋上にたまった雨水などを排水するための排水溝です。

ドレンのストレーナー(キャップ)に、風などで飛んできた木の葉やゴミがたまりやすい場所です。

木の葉やゴミが詰まると、雨水の排水が妨げられ、水の流れが悪くなります。

最悪、屋上がプール状態になってしまい、防水層にひび割れや剥がれがある場合は、雨漏りする危険性が高まります。

そうならないように、最低でも1年に1回はドレンにゴミや葉が詰まっていないかを確認し、ゴミを撤去することが重要です。台風や風が強い日の後は、なるべく早く屋上を点検しましょう。

清掃の方法は、近所の便利屋さんに頼むこともできます。便利屋さんは時間給が多く、比較的、安価で清掃を依頼できます。

技術力がある業者に依頼する

同じ屋上防水工事であったとしても、実は業者ごとに得意な分野というのが存在します。

防水工事は、防水工事専門業者以外に、外壁塗装業者やリフォーム会社も行っています。防水工事の技術力が高いのは、もちろん防水工事専門業者です。

不得意な施工では、手抜きや、雑な工事が行われ、本来の耐用年数ほど防水効果を発揮することができません。本来10年持つ防水効果が、1年で雨漏り…というケースは少なくありません。

また、ウレタン防水工事が得意な業者と、シート防水工事が得意な業者が居た時、それぞれに専門の工法を依頼することでコストを抑えることが可能となります。

安く抑えられる理由としては、専門の業者は年間の工事量が多く、メーカーからの仕入れ等が比較的安価になることから、見積もり価格も下がる傾向にあります。

そのため、同じ工法・使用材料であったとしても価格に差が出るのです。

屋上防水工事は、依頼をするのであれば防水工事の専門業者に依頼しましょう。

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