FRP防水とは?特徴・単価・メリットデメリットと工程を防水工事アドバイザーが解説!
FRP防水は、主にベランダやバルコニーに採用されていますが、屋上防水やプール、屋上の駐車場など多岐に渡り採用されています。
ポイントは、ガラス繊維と樹脂を組み合わせた強靭な防水層を形成する工法ということです。
耐久性が高く、複雑な形状にも対応できる特徴から、防水工事の採用シェアは低いものの、広範囲に採用されている工法です。
この記事では、防水工事アドバイザーである福島が、FRP防水の基礎知識から費用、メリット・デメリットまで詳しく解説します。
■福島 慎介
神奈川県出身 一般社団法人 防水工事推進協会 代表理事 防水アドバイザーとして12,000枚以上の見積りや防水工事を診断 お客様の立場・視点から分かりやすくお伝えします。
FRP防水とは?耐久性トップクラス!
FRP防水は、FRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)を使用した防水工法です。ベランダー・バルコニー、建物の屋上などに多く採用されています。
液状の不飽和ポリエステル樹脂に硬化剤を加え、ガラス繊維と組み合わせることで、強度が高く耐久性に優れた塗膜による防水層を形成します。
また、防水層は継ぎ目もなく、優れた防水性能を発揮します。
塗膜の硬化速度が速いため、ウレタン塗膜防水と同様に塗り重ねを行う仕様でも、天候や施工範囲によっては1日で施工を終わらせることができます。
複雑な形状の場所や、防水性能と強度の両方が求められる箇所に適しています。
FRP防水の材料
FRP防水に使用される主な材料とその特徴は以下の通りです。
①ガラス繊維マット | 防水層の強度を高める補強材 |
②不飽和ポリエステル樹脂 | 主剤となる液状の樹脂 |
③硬化剤 | 樹脂を固めるための添加剤 |
④トップコート | 防水層を保護するコート |
①~③の材料を配合で組み合わせることで、強靭な防水層が形成されます。材料の品質が防水性能に大きく影響するため、JIS規格に適合した信頼性の高い製品を使用することが重要です。
④のトップコートは施工した防水層を外部刺激や紫外線から保護し、防水層の劣化を防ぐための材料です。
FRP防水が向いている建物・場所
FRP防水は以下のような場所に特に適しています。
- ベランダ・バルコニー
- マンションの廊下
- 複雑な形状の防水箇所
- 屋上の駐車場
- 耐久性が必要な外部階段
- 植栽がある屋上庭園
- プール・温泉施設
- 厨房・キッチン
- 浴槽
耐久性・重歩行性が高いため、歩行頻度が高い廊下、ベランダ・バルコニー、屋上の駐車場などで採用されており、プールや温泉施設、厨房などにも採用されています。
また、植栽がある環境などでの使用に適しています。
車の重量にも耐えられるため、屋上の駐車場でも採用されることはあります。
しかし、建築学会/FRP防水工事施工指針によると、FRPとウレタンゴムを重ね塗りする仕様が推奨されています。
駐車場などの広範囲を別材料の塗膜防水で重ねりを行うことは、コストがかかり納期も長くなるため、アスファルト防水が採用される傾向にあります。
ただし、ウレタンゴムと混ぜることで、FRP防水の耐久性・重歩行性を活かしつつ、ウレタン防水の下地追従性も追加されることで、地震や衝撃により強い屋上防水層が出来上がります。
FRP防水の特徴・単価・耐用年数【早見表】
FRP防水 | FRP通気緩衝工法 | |
---|---|---|
施工単価 | 6,000~7,000円 | 7,500~8,500円 |
耐用年数 | 10~12年 | 13~15年 |
工期 | 4~7日 | 5~10日 |
メンテナンス期間 | 5~8年ごと | 5~8年 |
メンテナンス方法 | トップコート塗り直し | トップコート塗り直し |
雨漏り有効度 | ★★☆☆☆ | ★★★★★ |
伸縮性 | 伸縮性に乏しい | 伸縮性に乏しい |
向いている主な施工場所 | ・戸建ての屋上 ・ベランダ・バルコニー ・マンションの廊下 ・外階段 | ・ビルやマンションの屋上 ・貯水槽や室外機等が多いところ |
施工単価はウレタン塗膜などと比較しても高めになります。防水層の耐用年数は10~15年ですが、紫外線に弱いためトップコートを塗る必要があります。その為、トップコートのメンテナンスが必要です。
また、伸縮性も弱いため、木造のように湿度などにより伸縮する建物には不向きです。
FRP防水は、ベランダ・バルコニーでは多く採用されていますが、屋上の採用率は低い防水工法です。
FRPの単価について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。
FRP防水のメリット・デメリット
FRP防水には、その他の防水工法にないメリット・デメリットがあります。採用率が高い工法ではないので、しっかりとデメリットも理解しましょう。その上で、必要に応じて採用すると良いです。
FRP防水の5つのメリット
FRP防水のメリットは、主に以下の5つです。
- 高い防水性能
- 一体化した防水層により水密性が高い
- 化学物質への耐性が優れている
塗膜防水は継ぎ目のない防水層を形成できるため、防水性能は高くなります。
- 複雑な形状に施工できる
- 液体樹脂を使用するため複雑な形状や細部に施工できる
- 配管まわりや角部など、細かい部分の処理が得意
- 段差や勾配がある場所でも均一な防水層を形成できる
複雑な形状で狭い場所でも施工できるので、こちらも特にベランダ・バルコニーには最適な工法です。
- 高い強度と耐荷重性
- ガラス繊維による補強で、歩行にも十分耐える強度
- 家具や植木鉢などの重量物にも対応
- 防水層自体が保護層となるため、別途保護層が不要
ベランダやバルコニー、マンションの廊下は屋上と比較すると歩行することが多く、耐久性の優れたFRP防水が採用される傾向があります。
- 軽量
- 1㎡4kg前後
- 建物に負担がかかりにくい
- 古く強度が弱くなった建物にも向いている
他の工法と比較しても防水層がとても軽いため、建物への負担がかからないこともメリットです。
- 工期が短い
- 防水材が硬化しやすく面積によっては1日で終わることもある
FRP塗膜防水は硬化しやすいため、ウレタン塗膜防水と比較してもすぐに乾きます。トップコートを塗る工程もありますが、トップコートも3~4時間で乾くため、FRP防水は工期がとても短いのが特徴です。
FRP防水の4つのデメリット
FRP防水のデメリットは、主に以下の4つです。
- 価格が比較的高額
- 材料費が高く、工事費用も大きい
- ウレタン防水と比べて10%程度高くなる
- 職人の技術力による価格変動が大きい
FRP防水の大きなデメリットは費用が高いことです。
- 天候に左右される施工条件
- 気温5℃以下では施工不可
- 湿度が高いと硬化不良の可能性
- 雨天時は施工できない
作業が天候の影響を受けやすく、特に梅雨の時期は計画通りに進まないことが多いです。
- 硬化するまで臭いがする
- 施工時に強い臭いが発生
- 揮発性有機化合物(VOC)への注意が必要
FRP防水は硬化するまでに強い刺激臭が発生します。集合住宅の場合は事前周知を徹底しましょう。
- 伸縮性がないためひび割れしやすい
- 湿気で下地が動くとひび割れしやすい
- 地震の揺れでひび割れが発生する可能性がある
伸縮性は長期的に防水層を維持するために必要な要素です。
FRP防水の工程・流れ
FRP防水の標準的な施工工程は以下の通りです。
1.下地処理(1日目)
下地を清掃し、その後、プライマーが付きやすくなるよう下地の補修・平滑化を行います。
2.プライマー塗布(1日目)
プライマーを均一に塗布して密着性を持たせる。
3.ライニング1層目(2~3日目)
- ガラスマット敷設
- ポリエステル樹脂塗布
- 樹脂含浸
- 脱泡処理
- 硬化
ガラスマットを敷き、ポリエステル樹脂を塗って脱泡し硬化させます。
4.ライニング2層目(3~4日目)
- ガラスマット敷設
- ポリエステル樹脂塗布
- 樹脂含浸
- 脱泡処理
- 硬化
2プライの時は、工程3と同様にガラスマットを敷き、ポリエステル樹脂を塗って脱泡し硬化させます。
5.中塗りしサンディング(4~5日目)
中塗りし、トップコートを密着しやすくするためサンダーなどで研磨します。
6.トップコート塗布(4~5日目)
トップコートを塗布します。
FRP防水と他防水工法との比較
工法 | 耐用年数 | 単価/1㎡ | 強度 | メンテナンスのしやすさ |
---|---|---|---|---|
FRP防水 | 10~15年 | 6,000~8,500円 | ★★★★★ | 5~8年ごとにトップコート塗り直し |
ウレタン防水 | 10~15年 | 5,000~7,500円 | ★★★★☆ | 5~8年ごとにトップコート塗り直し |
塩ビシート防水 | 12~18年 | 6,000~7,500円 | ★★★★☆ | トップコート塗り替えのメンテナンスフリー |
改質アスファルト防水(トーチ・常温工法) | 10~20年 | 5,000~7,500円 | ★★★★★ | 5~8年ごとにトップコート塗り直し |
比較しながら分かる特徴は以下の4点です。
- 耐久性
FRP防水は一般的なウレタン防水より高い耐久性を持ちます。 - コスト
初期費用は高めですが、長期的な耐久性を考慮すると費用対効果は良いです。 - 施工のしやすさ
複雑な形状に対応できる反面、天候による制約があります。 - 強度
他防水工法と比較しても、強度の高いことがわかります。 - メンテナンス
定期的な点検と補修が必要ですが、部分補修が可能です。
結論として、FRP防水は高い耐久性と防水性能の両方を求められる場所、特にバルコニーやベランダ、複雑な形状を持つ箇所、狭い場所などに合った工法といえます。
FRP防水は、初期費用は比較的高額ですが、中長的に考えると費用対効果の高い選択肢として、悪くありません。
FRP防水が安くて得意な優良業者を最大3社紹介
FRPについてご説明してきましたが、FRP防水は非常に優れた耐久性も持ちながら、デメリット部分もあるため、採用する前に複数の業者に調査依頼するようにしましょう。
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