コーキングの役割と重要性、正しい施工工程を解説!
外壁のジョイント部分に施工するゴム状の材料ですが、何の為に必要なのでしょうか?
意外と分かっていない方も多いかもしれませんね!
防水アドバイザーの福島がコーキングの必要性について解説していきます!
■福島 慎介
神奈川県出身 一般社団法人 防水工事推進協会 代表理事 防水アドバイザーとして12,000枚以上の見積りや防水工事を診断 お客様の立場・視点から分かりやすくお伝えします。
コーキングの劣化状態例や失敗しない方法はこちらで紹介しています。
1. コーキングの役割
実は、コーキングというのは想像以上の効果を建物に発揮してくれております。密かに縁の下の力持ちのような役目を担っている、とても大事な存在です。
外壁のジョイント部分にコーキングを設ける事は、建物の構造上とても大事な役目を担っています。
コーキングを設ける事で、建物の緩衝を受ける事が出来ます。
体に例えると、軟骨のような存在です。
コーキングは伸び縮みする伸縮性があるので、地震などの揺れによりほかの重要な部分に影響を与えず、コーキング部分に全て力を逃がす事が可能となります。
外壁で例を取ると、コーキングを設ける事でワーキングジョイントとなり、外壁自体にヒビを作る事を防ぐ事が出来ます。
建物に柔軟性を作る為には、とても必要な役目があります。
1-1. 柔軟性が生まれると防水性が高まる
柔軟性を作る事で外壁などにヒビを作らなく済むので、防水性を高める事が出来ます。
コーキング自体に防水性がありますが、他の部位に水が浸入する原因を作らないようにするので、防水性が高いと言えます。
コーキングを設けるという事は、建物の寿命を高める事が出来る大事な物なのです。
1-2. 誘発目地を作り建物の緩衝性を高める
サイディングやALC等目地を設けなければ治まらない材料じゃなくても、わざわざ目地を作ってコーキング施工を行う事で、建物の緩衝性を高める事を行います。
誘発目地
3m程間隔に誘発目地を設けて、コーキング充填を行います。
見た目はモルタル壁がブロックの様に分かれてしまうので、カッコ悪いと思う方もいると思います。
しかし、誘発目地は建物の寿命を高める為には必要な施工と言えます。
昔のモルタル壁には、誘発目地がありませんでした。
力を逃がす部分が全く無かったので、サッシの四隅等にクラックが入っている事が当たり前でした。
モルタル外壁も、誘発目地を設けてコーキングを充填する事で、ヒビが入らないモルタル壁にする事が出来ます。
1-3. 内壁の入隅
ゴム系の材料ゆえに、役立ってくれる場所があります。
それは、内壁の壁紙を張った後の入隅にコーキングを充填する事です。
入隅が開く数ミリにコーキングを設けます。
内壁の四隅は地震等の様々な動きにより、すぐに開いてしまいます。
その度に、壁紙が開いて見えてしまうので、カッコ悪く隙間風も生じてしまいます。
よく壁紙屋さんが仕上げに充填するのですが、このコーキングのおかげで少しの動きがあっても隙間を作らず快適な内壁で居続ける事が出来ます。
ボンドコークという材料ですが、内壁の壁紙を張っている部分には必要不可欠な材料ですので、隙間が空いたら壁紙屋さんに充填してもらうと良いでしょう。
入隅に隙間が空くのは壁紙屋さんの施工不良ではなく、建物自体の動きですので、勘違いしないようにしましょう。
このように、コーキングは物理的に役に立つ部分が非常に多い、無くてはならない材料です。
建物への必要性は多いにありますので、効果的に活用して建物の耐久性を高めるようにしましょう。
コーキングの使い方次第で、建物を50年も100年も使う事が可能になります。
2.コーキング材の選び方
コーキングと言っても、様々な種類の材料があります。また、様々なメーカーからも出ています。
一般的に使われるコーキングは、以下の種類があります。
2-1. コーキング材の種類
コーキング材には主4つの種類があります。シリコン系、ウレタン系、ポリサルファルド系、アクリル系ですが、特徴と単価がそれぞれ異なります。
1つずつ解説します。
シリコン系
サイディングやコンクリート、ALC、金属、石、ガラス等の目地に使われるコーキングであり、耐久性と紫外線に強いのが大きな特徴です。
汚れに強いので、外部で使われる事が多コーキングです。
ウレタン系
サイディングやコンクリート、ALC、金属、ガラスの目地に使われるコーキングであり、耐久性が高いのが大きな特徴です。
汚れには弱いですが、外部塗装する材料に使われる事が多コーキングです。
ポリサルファイド系
アルミ、石、コンクリート、タイル等の目地に使われるコーキングであり、耐久性が高く汚れにくいのが特徴です。
ブリードが強いので、塗装を乗せる事が出来ません。
高耐油性なので、油分を多く使う場所にとても重宝するコーキングです。
アクリル系
耐候性と耐久性に乏しいので、室内で使う事が大半のコーキングです。
乏しいとなると採用したくなくなりますが、単価が安価ですので室内で採用されております。
ジョイントコーク
室内で使うコーキングであり、細いノズルのチューブ型で、そのままノズルをカットする事で使う事が出来るコーキングです。
やわらかく伸びる素材であり、内壁のジョイント部分などに使います。
素人さんでも充填しやすい素材でマスキングテープが無くても簡単に充填が出来ます。
以前はホワイト位しかありませんでしたが、現在はアイボリーやオーク、木材色、抹茶色等の様々な色合いがあります。
DIYでコーキングを行う場合は、防カビ材配合の物をオススメします。
水廻りや湿気の多い場所に使ってもカビが発生しにくい性質を持っており、コーキングが長持ちします。
防カビ材が入っていないコーキングより高価ですが、後々の事を考えると必要な要素ですので、オススメです。
2-2. コーキングの1液性・2液性の違い
コーキングには、ホームセンターなどに売っているカートリッジ式の1液性と、缶に入っている2液性の2種類あり、下記のような特徴あります。
1液性のコーキング
全て最初か全てが混ぜ合って配合されているカードリッジ式のコーキング材です。
封を切るだけで、使う事が出来るコーキングです。
その為、素人さんでも簡単に使う事が出来るコーキングは、こちらの1液性です。
ホームセンターに売っているので、気軽に手に入れる事が出来ます。
2液性のコーキング
主剤と副材の2つに分かれており、施工前に2つを撹拌機で混ぜ合わせて使います。
専用の攪拌機が必要となるので、素人さんでは扱う事は不可能なプロ向きのコーキングとなります。
特性の違いは、2液性の方が圧倒的に劣化しにくいという部分です。
その為、一般的に外壁工事でプロが使うコーキングは、2液性を使う事が殆どです。
特に外壁は紫外線により劣化が激しいので、2液性を使う事を強くオススメします。
カラーマスターが付いているので、理想のコーキングの色を作る事が出来ます。
ただし、カラーマスターは基本の色しか在庫していない事が多いので、特殊な色にしたい場合はカラーマスターが特注になってしまいます。
カラーにもよりますが、およそ3週間かかってしまう事が大半です。
その為、時間を要する事をあらかじめ考慮した上で注文すると良いでしょう。
外壁に充填する事にオススメなコーキングは、変性シリコンシーリングです。
シリコンは塗料が乗りませんが、変性シリコンは塗料を乗せる事が出来ます。
その為、無塗装版のサイディングやALCに使う事も出来ます。
防カビ材が含まれている事も多い材料ですので、外壁にはとても適したコーキングと言えます。
2-3. 材料選びの注意点!
注目してほしいのが、F☆☆☆☆のコーキング材とプライマーを採用する事です。
今のコーキング材は、殆どがF☆☆☆☆です。
業者さんが選定するコーキング材料は、ほぼF☆☆☆☆の材料です。
しかし、DIYで行おうと材料を手に入れた場合、購入したルートにより、F☆☆☆☆じゃないコーキング材料に出会ってしまう事があります。
プロはすぐに解って使用を避けるのですが、素人さんがDIYで使う際は材料に詳しく無ければ気が付かない部分でもあります。
接着機能がある材料や塗料関係の材料を選ぶ際には、F☆☆☆☆の材料を必ず選ぶ事が鉄則です。
使わない理由は無いので、必ず選定するようにしなければなりません。
見えやすい部分に必ず表示してありますので、必ず確認しましょう。
これらの事を踏まえると、コーキングという作業は簡単そうに思えても、とても難しいという事が理解できると思います。
目地に充填してヘラ押えするだけの簡単作業に聞こえがちですが、材料選びから施工までとても厄介で面倒な工事です。
防水性と安全性をきちんと高める為に適した材料と施工を行う為には、コーキング施工はDIYではなくプロにお任せする事を強くオススメします。
3.コーキングの正しい工程とは
コーキングは凄く簡単に思えるかもしれないですが、ただ溝にコーキング材を充填するだけではなく、適切な工程がございます。
この適切な工程を行う事で、正規のコーキング施工となり意味を大きくなします。
コーキングを外壁に使う事は、建物を守ってもらうために非常に重要な事です。
コーキング施工のプロセスとポイントを、ご紹介します。
3-1. 撤去からバックアップ材
はじめに、既存のコーキングを撤去し、バックアップ材を塗りこむ作業となります。
既存コーキングの撤去(打ち替えの場合)
乾燥及び清掃
ボンドブレーカー若しくはバックアップ材を充填する
コーキングは、目地底の1面を接着させない2面接着が基本です。
3面接着にすると、すぐコーキングが劣化してしまいます。
3面接着を避ける為に、コーキングの形状を確保できるようにバックアップ材を充填します。
サイディングの目地底には最初からボンドブレーカー(絶縁テープ)を施している事が大半ですが、無い場合はボンドブレーカーやバックアップ材を充填します。
目地底に似合った物を使い、接着剤が付いている物は1㎜程小さい物を、接着剤が付いていない物は1~2㎜大きい物を充填します。
動きが少ないと断定できる部分のみ、3面接着にする事が可能になります。
3-2. マスキングからプライマー塗布
次に、プライマー(下地接着剤)を塗布します。マスキングを行い、プライマーを塗りこむ工程を解説します。
マスキングテープ張付け
プライマー塗布
プライマーの効果を発揮させる為にオープンタイムは必要であり、接着性を担う成分がコーコング被着部分の表面に塗膜化される事で、コーキング材との密着を高める事が出来ます。
プライマーには使用期限があり、製造年月日より6ヶ月以内の物を使わなくてはいけないと決まっております。
6ヶ月以上経ってしまったプライマーは効果をなさないので、不採用としましょう。
3-3. コーキング充填からヘラ押さえ、マスキングテープ除去
続いて、コーキング充填を行い、ヘラ押さえを行います。ヘラ押さえ後は、マスキングテープを除去します。
コーキング充填
撹拌したコーキング材料は、1日で使い終わるようにしなければなりません。
専用のカードリッジに撹拌したコーキングを入れて、充填に使います。
気泡が入らないよう、目地底部から丁寧に素早く充填していきます。
きちんと目地底部から隙間なく充填していく事が、想像以上にとても大変です。
ヘラ押え
マスキングテープ撤去
3-4. 工程まとめ
ここまでの工程が、一般的なコーキングの施工方法の流れです。
表面硬化は2~3時間でおきますが、コーキングの中まできちんと硬化するまでは24時間程かかります。
その間は、絶対に触れないように注意しましょう。
また、表面硬化すると水に当たっても問題ありませんので、万が一雨が降っても全く問題はございません。
施工環境の温度ですが、5℃以上50度以下と決まっております。
50℃以下になる事は今の日本ではありえませんが、5℃以下になった場合は暖房養生等の適切な養生の上で5℃以上を保つようにしながら施工しなくてはいけません。
コーキングの幅には限度があり、35㎜以下の溝(幅)以下にしか打つ事が出来ません。35㎜以上の幅の場合は、他の材料で幅を狭くしコーキング充填を行うようにしなければなりません。
これらの工程は、1つでも抜けていると万度なコーキングにはなりません。
慣れていない方には、とても苦痛で大変な作業です。
目地の底からきちんと充填されていなければ効果を発揮しないので、日曜大工感覚で行うと上手くいかないでしょう。
コーキングは必ず、プロの防水屋さんに行ってもらう事を強くオススメします。
コーキングは外部の水の浸入をブロックしてくれる頼りにしなければいけない部位ですので、確実な施工で建物を長持ちさせましょう。
4.コーキング工事の際の大事な工程「プライマー」とは?
コーキング工事の際に大事な工程といえば、プライマーです。
コーキング充填の前に行う工程なのですが、プライマーを塗布するのとしないのとでは大きな差が発生します。
DIYでコーキングを行う際にプライマーを採用する方は少ない傾向がありますがプライマーを理解する事でプライマーの良さを把握する事が出来ると思います。
プライマーというのは、コーキング施工には欠かせない工程となります。
4-1. コーキングにおいてプライマーは接着剤の効果の発揮する
プライマーは接着剤の役目を果たし、プライマーを塗布する事で、被着面とコーキングの接着を良くさせる事が出来ます。
プライマーを塗布せずコーキングを充填してしまうと、コーキング溝へコーキングがしっかり密着しませんので不出来なコーキングとなってしまいます。
プライマーを塗布する事で、強固で長持ちするコーキングとする事が出来ます。
4-2. プライマーを使う際の3つの注意ポイント
プライマーを使う際は、3つのポイントを抑えておく必要があるので、必ず確認しましょう。
コーキングに適したものを選ぶ
プライマーの種類やメーカーごとの専用のプライマーがありますので、必ずそれを採用しなければいけません。
コーキング溝の乾燥状態を確認
コーキング溝が乾燥されている事を確かめ、乾燥されているのが確認された後プライマー塗布へと進みます。
コーキング溝が乾燥されていないうちのプライマーを塗布すると、プライマーを弾いてしまい、プライマーの効果を半減させてしまいます。
プライマー塗布
プライマーを良く撹拌した後に開栓し、細い刷毛を用いてコーキング溝に塗布します。
タップリ塗布し、塗布漏れが無いようにしっかりと塗布します。
コーキングは接着剤の効果を発揮するので、プライマー塗布後20分~1時間以内にコーキングを充填しなくてはいけません。
プライマーを外壁のコーキング溝全体に塗布し時間が経ってからコーキングを充填する業者もいるようですが、これではプライマーの接着力を発揮させる事は出来ません。
乾燥時間のオープンタイムは、プライマー塗布の際の温度によって異なります。
ほとんどのプライマーの場合、5℃まで60分以上、23℃まで30分以上、30℃まで20分以上と決まりがあります。
プライマー塗布後のオープンタイムを過ぎてしまった場合は、再度プライマーを塗布しなければいけません。
プライマーには使用期限があり、製造後1年以内且つ開栓後当日以内に使用しなければ行けません。
使用期間が過ぎてしまったプライマーはその効果が薄れてしまいますので、絶対に使ってはいけません。
コーキング工事にプライマーは大変重要な役割を果たす存在となります。
プライマーを塗布する事で強く寿命の長いコーキングとする事が可能となります。
コーキング前に塗布するだけで高い効果を発揮してくれますので、使わない考えはありません。
5.コーキングは数色では無い!色んなカラーがある?
コーキングの打ち替えをした際に、既存の外壁と新規のコーキングの色が全く合っていない事があります。
打ち直しだから仕方のない事だと業者に言いくるめられる事も多いようですが、本来このような事はあり得ません。
新築の際に外壁に合わせたカラーのコーキング充填が出来たのに、打ち直しの際には無理という話は道理に叶いません。
このようなコーキングのトラブルは、よく起きているようです。
5-1. コーキングの色の種類
コーキングには基本のカラーがあり、常にある種類は6種類ほどしかありません。
6種類しかないので仕方がないと言われる事があるようですが、基本は6種類しかないというだけで、実は他にも沢山のカラーがあります。
外壁のカラーは様々あるので、コーキングメーカーは特注でカラーを作る事が可能となっております。
コーキングの元のベースカラーは、グレー色です。
グレー色にカラーを混ぜる事で、様々なコーキングのカラーを作ります。
カラーマスターという粉を特注で作り、コーキング材に撹拌して混ぜる事で、理想のカラーのコーキングを作る事が出来ます。
特注ですので多少の追加料金が取られてしまう事がありますが、それほど高くありません。
また、特注で作成するので、3週間程かかってしまいます。
その時間を逆算して、メーカーに依頼して作ってもらいます。
カラーマスターを作成してもらうと、日本塗装工業のカラー見本のようにどんな色のコーキングでも作る事が可能となります。
既存外壁に合わせて作るので、どうしても100%同じカラーにはなりませんが、近似値にはする事が可能です。
コーキングの打ち直しを行う際に、少ないカラーからの選択しか出来ないという業者であれば、コーキングの打ち直しを依頼するのは止めましょう。
色んな建物を扱っている業者であれば、このようなカラーマスターでの作成に詳しく、お客様から言わなくても外壁に近いカラーのコーキングを発注して施工してくれます。
コーキングは建物上から下まで一直線に充填するので、そのカラーが違うようであれば酷く目立ってカッコ悪い外壁にしてしまいます。
コーキングを打ち直して建物を丈夫にしようと思って行ったのに、外観の見た目が変になるなんて良い事ではありません。
お客様の立場に立って考えられる業者に、コーキング施工をお願いするようにしましょう。
6.まとめ
コーキング工事の必要性や工程や順序を解説させて頂きました。
たくさんの注意点や材料選びなど難しいと思われる点があります。
建物の寿命を延ばすには、防水性と安全性をきちんと高め、適した材料と施工を行う必要があります。
コーキング施工はDIYではなくプロにお任せする事をお勧めしています。