改質アスファルトシート防水とは?工法種類や施工費用を防水工事アドバイザーが解説!

更新日:2024年10月11日 BY 福島 慎介

改質アスファルトシート防水は、施設やビル・マンションなどの屋上やルーフバルコニーなどで採用されている耐久性に優れた工法です。

従来のアスファルト防水に特殊な樹脂を混ぜて耐久性と柔軟性を向上させた、最新の防水工法であり、雨風にさらされる場所をしっかりと保護し、建物の寿命を延ばします。

耐久性に着目されている方は必見の防水工法です。

この記事では、防水工事アドバイザーである福島が、改質アスファルトシート防水の特徴やメリット・デメリット、費用について詳しく解説します。

この記事の監修者
福島 慎介
福島 慎介

神奈川県出身 一般社団法人 防水工事推進協会 代表理事 防水アドバイザーとして12,000枚以上の見積りや防水工事を診断 お客様の立場・視点から分かりやすくお伝えします。

防災工事推進協会 代表理事 紹介ページへ



改質アスファルト防水とは?
<改質アスファルト防水とは?>

改質アスファルトシート防水は、特殊な樹脂やゴムを加えたアスファルトを、シート状にしたものを、建物の表面に貼り付ける工法です。

特殊な樹脂やゴムを加えたアスファルトシート
<特殊な樹脂やゴムを加えたアスファルトシート>

下地に張り付け又は固定する工法で、貼り付け方は、トーチ、粘着、ディスク盤等で固定(機械固定)する方法があります。

従来のアスファルト防水よりも、耐久性・耐候性・柔軟性に優れており、建物の動きにも追従するため、ひび割れしにくいのが特徴です。

改質アスファルト防水の耐用年数と単価は以下の通りです。

ここでは他の主な工法とも比較をします。

耐用年数耐久性レベル単価
改質アスファルト防水単層2mm:10~12年複層4mm:12~18年複層6mm:15~20年★★★★☆5,000~7,500円
アスファルト防水5mm:15~20年10mm:25~30年★★★★★10,000~15,000円
塩ビシート機械固定工法15~18年★★★★☆6,500~7,500円
ウレタン防水通気緩衝工法13~15年★★★☆☆6,000~7,500円

改質アスファルトシート防水には下記の3種類の工法があります。

工法特徴メリット
トーチ工法アスファルト防水の改修の時に採用される
バーナーで専用のシートを炙りながら貼り付けていくため効率的に施工が可能
防水性が高く、接着性も強い
既存のアスファルト防水の上にかぶせることができる
マンションや大型建物の実績数が多い
常温粘着工法アスファルト防水の改修の時に採用される
バーナーの熱でアスファルトを溶かさずに施工する方法
一般的に煙や臭いが出にくいため、密集している住宅街でも採用されることが多い
一般的に煙や臭いが出にくいため、密集している住宅街でも採用されることが多い
火を使用しないため室外機などが設置されていても、焦げたり溶けたりしない
機械固定工法コンクリートに直接ディスク板とアンカーで固定する工法です

接着剤を使用しないので接着剤の乾燥時間が必要ない
下地が湿っていても施行が可能

1層の防水層のため工期を短縮できる

トーチ工法常温粘着工法が採用されるケースが多いですが、機械固定工法は下地の状態が悪く、湿っていても施工ができる点がメリットです。

トーチ工法

改質アスファルト防水 トーチ工法
<改質アスファルト防水 トーチ工法>

改質アスファルトシートを高温(800~1,000℃)のトーチバーナーで炙りながら施工する方法です。

従来のアスファルト防水の熱工法では、アスファルトの溶解とシートの貼り付けは別工程で実施する必要があるのですが、トーチ工法ではバーナーでシートを炙りながら貼り付けていくため効率的に施工が可能となっています。

注意点としては、シートを熱しながら貼り付けていく際、完全に密着させるには施工業者の技術レベルが求められます。

常温粘着工法

改質アスファルト防水 常温粘着工法(冷工法)
<改質アスファルト防水 常温粘着工法(冷工法)>

常温粘着工法(冷工法)とは熱でアスファルトを溶かさずに施工する方法です。

改質アスファルトシートの裏に粘着層のコーティングを行い、熱を利用せずにシートを密着させていきます。

一般的に煙や臭いが出にくいため、密集している住宅街でも採用されることが多いです。

煙も臭いも出ず環境にやさしい工法ですが、シート同士の隙間を埋めるために上述の2工法よりも多くのシートを重ねる必要があります。

防水層の重量が大きくなるため、建物や屋上の耐久性を考慮する必要がある施工法です。

機械固定工法

改質アスファルト防水 機械固定法
<改質アスファルト防水 機械固定法>

画像出典:日新工業株式会社
https://www.nisshinkogyo.co.jp/product/detail/mechatop

改質アスファルト防水の機械固定工法は、下地にアンカーを用いて直接固定する工法です。

下地の状態に左右されにくく、凹凸や湿気があっても施工が可能で、下地調整の手間を削減できます。

湿気を外に排出する仕組みであるため、防水層の膨れを防ぐことができます。

さらに、工場での生産により均一な品質を維持でき、ジョイント部分の水密性も優れているため、新築物件はもちろん、改修工事でも採用されています。

また、接着剤を使用しないため、接着剤の乾燥時間が不要です。

それにより、工期の短縮とコスト削減ができるメリットもあります。

改質アスファルト防水のメリット・デメリット
<改質アスファルト防水のメリット・デメリット>

改質アスファルト防水にはメリット・デメリットがあります。

耐久性が期待できる一方で、費用の高さや施工技術のレベルの高さが採用のハードルを高くしています。

改質アスファルトシート防水のメリット

改質アスファルトシート防水には、以下のようなメリットがあります。

  • 耐久性:トーチ工法単層4mmは12~15年、複層6mmは15~20年。
    常温粘着工法単層2mmは10~12年、複層4mmは13~18年。
  • 施工:シート状なので施工が容易で工期も早い。
  • 改修:既存のアスファルト防水の上にかぶせることができる

改質アスファルトシート防水は、アスファルト防水より安く、施工が容易で工期が早い工法です。

改質アスファルトシート防水のデメリット

一方で、以下のようなデメリットも考慮する必要があります。

  • 技術:専門的な知識と技術が必要
  • 接合部:接合部を密着させるには技術力が必要
  • 補修の難しさ:シート状なので破損した場合、部分的な補修が難しい

シート防水やウレタン防水に比べ、工事難易度も高い工法です。

アスファルト防水とは?
<アスファルト防水とは?>

アスファルト防水は、溶かしたアスファルトを建物の表面に塗布して防水層を作る、130年以上の歴史がある伝統的な工法です。

安価で施工性が高い一方、耐久性や耐候性に劣り、定期的なメンテナンスが必要です。

現在でも大型施設や公共工事の主に新規物件にアスファルト防水の熱工法が採用されています。

アスファルト防水をより詳しく知りたい方は「アスファルト防水とは?」をご覧ください。

アスファルト防水のメリット

アスファルト防水のメリットは以下が挙げられます。

  • 耐用年数:5mmは15~20年、10mmは25~30年と長い
  • 施工:アスファルトがすぐに固まるため防水層の形成を簡単にできる
  • 実績:130年の実績があり、歴史が古いのでデータなどが豊富
  • 適した建物:マンションや大型の建物

「歴史も長く、信頼性も高く、耐用年数も長い」点がポイントです。

アスファルト防水のデメリット

アスファルト防水のデメリットは以下です。

  • 施工:高温でアスファルトを溶かす際に異臭や煙が出る
  • 重量:重さで建物に負荷がかかる
  • 技術:取り扱う業者が少なくなっている
  • 適した建物:小さい面積の建物には向いていない

アスファルト防水は、新規物件には採用されていますが、改修工事ではほとんど採用されません

建物への負荷も大きくなるため、別の工法が採用されます。

改質アスファルトシート防水とアスファルト防水の違いが分かりにくいという方は多いようです。比較表を用いて違いについて紹介します。

特徴改質アスファルト防水アスファルト防水
耐久性12~20年以上15~30年
耐候性やや優れている優れている
素材の柔軟性高い低い
初期費用比較的低い高い
施工の速さ速いやや遅い
環境への負荷低い高い
重量やや重い重い
補修の容易さやや難しいやや難しい

もう1点付け加えると、アスファルト防水は新築工事で採用され、改修工事ではほとんど採用されません。しかし、改質アスファルトシート防水は、新築、改修どちらも採用されます。

改質アスファルトシート防水の施工費用は、施工面積や建物の形状、使用する材料などによって異なります。

一般的な目安は以下の通りです。

  • 中規模マンション(約150~300㎡):180~360万円
  • 大規模マンション・施設(約300~500㎡):360~510万円
  • 大規模施設(約1000㎡以上):1020万円~

また、改質アスファルト防水と採用の天秤にかけられるのが「塩ビシート防水」です。

塩ビシート防水との費用比較は以下の通りです。

費用/1㎡メンテナンス
コスト/1㎡
メンテナンス周期
改質アスファルト防水5,500~7,500円3000円~定期的(5~8年毎に)にトップコートをする必要がある
塩ビシート機械固定法6,500~7,500円0円トップコート塗り替えのメンテナンスフリー

改質アスファルトシート防水は、シート防水機械固定工法やウレタン防水通気緩衝工法より採用率が低いものの、耐久性に優れ耐用年数も長いため、大きなメリットがあります。

ただし、改質アスファルトシート防水工法は技術レベルが高い業者ではないと扱えず、二次委託されて高い見積もりが提示される可能性もあります。

防水工事見積もり.comは、改質アスファルトシート防水の工事ができ、工事費用も安くできる業者を最大3社紹介することができます。

また、改質アスファルトシート防水以外の工法も提案ができますので、建物の状態やご予算などに合った工法選びのお手伝いをいたします。

防水アドバイザーの福島までご相談ください。

カテゴリー :アスファルト防水  タグ:アスファルト防水 改質アスファルト防水