マンションで雨漏りが起こる原因と対処法!責任の所在や防水工事の流れも解説!
マンションでの雨漏りは住民にとって深刻な問題です。
建物の劣化によって発生する雨漏りは、生活環境を悪化させるだけでなく、建物自体の価値や安全性にも影響を及ぼします。
マンションで雨漏りが起こる原因と対処法について、防水アドバイザーの福島が詳しく解説します。
■福島 慎介
神奈川県出身 一般社団法人 防水工事推進協会 代表理事 防水アドバイザーとして12,000枚以上の見積りや防水工事を診断 お客様の立場・視点から分かりやすくお伝えします。
マンションで雨漏りはなぜ起こるのか
マンションの雨漏りは、建物の老朽化や既存の防水層の劣化が主な原因ですが、手抜き工事やメンテナンス不足で雨漏りが発生するケースもあります。
マンションの雨漏りは、オーナーにとって資産価値・家賃収入減少のリスクがあり、入居者からのクレームや、退去、契約解除に繋がる深刻な問題です。
一般的な雨漏りの原因として認識されているものを挙げて解説します。
経年劣化
建物が歳月を経るにつれて、屋上防水や外壁の材料は徐々に劣化します。
防水機能が低下し、わずかな雨水が侵入する隙間が生じることがあります。
屋上や屋根は、直射日光や雨、風、温度変化などの自然環境に直接晒されるため、材料の劣化が最も早く進む部分の一つです。
例えば、屋上防水のウレタン防水やシート防水は、時間の経過とともに色あせたり、ヒビが入ったり、剥がれたりすることがあります。
外壁は、壁の塗装やシーリング剤も紫外線や環境因子の影響を受けやすく、割れや剥がれが発生しやすいです。
この劣化が進むと、外壁や窓枠の隙間から水が侵入しやすくなり、内部の構造物にも影響を及ぼす可能性があります。
施工不良
初回施工時からの施工不良により、短期間で雨漏りが発生する可能性があります。
防水層の厚み不足、接合部の処理不良、適切な材料の使用不足、塗膜防水の乾燥不足などが一般的な施工不良の原因です。
メンテナンス不足
定期的なメンテナンスを怠ることは、雨漏りのリスクを高める主要な原因です。
メンテナンスは主に防水層の劣化がないか、トップコートが劣化していないか、排水の詰まりがないかなど定期的に確認し、メンテナンスが必要です。
メンテナンス不足により、水が溜まることで屋上やバルコニーからの漏水が発生することがあります。
手抜き工事・技術力不足
施工時の手抜き工事や、防水工事施工者の技術力不足も雨漏りの大きな要因です。
防水工事は専門性が高く、防水工事専門業者がある工事ですが、リフォーム会社や塗装会社なども工事をすることがあり、技術力の差により雨漏り対策の防水工事が不十分なケースがよくあります。
防水工事は仕上がった状態で手抜き工事かどうか判断がしずらく、それを利用した悪質な手抜き業者もいます。
最上階は雨漏りしやすい
最上階は、直接的に雨に晒されるため雨漏りが起きやすいです。
特に屋上が防水処理されていない場合や、防水層の劣化が著しい場合、漏水のリスクは高くなります。
雨だけでなく、紫外線も雨漏りの原因になります。
紫外線は雨漏りを防ぐ防水層の劣化を進行させ、雨漏りの原因に繋がります。
屋上は常に紫外線にさらされているため、屋上が劣化してしまうと、結果的に最上階は雨漏りしやすくなります。
下の階は水漏れの可能性も
最上階からの雨漏りの漏水が建物内部を伝わり、下の階も雨漏りする場合があります。
しかし、配管などの水漏れにより、下の階でのみ発生する水漏れもあります。
実際に下の階で雨漏りのような現象が起きたときは、原因を調査することが必要です。
マンションと一戸建ての雨漏りの違い
マンションの陸屋根は、一戸建ての屋根(切妻屋根、寄棟屋根、方形、片流れなど)よりも雨水が溜まりやすい形状になっているため、マンションの防水工事は、専門業者による質の高い防水工事を行う必要があります。
屋根のタイプ | 屋根の形状 | 劣化の原因 | |
---|---|---|---|
マンション | 陸屋根 | 平らな屋上 | 水が溜まりやすい風雨による劣化紫外線を受けやすい |
一戸建て | 切妻屋根、寄棟屋根、方形、片流れなど | 斜めになっている屋根 | 風雨による劣化紫外線を受けやすい |
住民の安心・安全を守り、建物の価値を下げないためは、マンションの管理組合や管理会社が中心となって、専門業者を通じて定期的なメンテナンスや、大規模修繕計画を元に雨漏り対策を行います。
マンションの雨漏り対策を怠ると、多層構造であるために、上層部からの水漏れが下層へと雨漏りの影響が広がっていくことになります。
マンションで雨漏りが起こる原因箇所
マンションにおける雨漏りは主に下記の箇所から発生することが多いです。
- 屋上(陸屋根)
- ドレン
- ベランダ・バルコニー
- 外壁
ここでは、主な原因となる箇所を詳細に解説します。
屋上(陸屋根)
マンションの屋上は、防水層の劣化とドレンの劣化により雨漏りが起こります。
屋上から雨漏りしてしまうと、最上階だけでなく、下の階も雨漏りが起こる可能性があります。
防水層に劣化のサインが見られる場合は、すぐに防水工事をする必要があります。
また、劣化のサインが見られない場合でも、防水工事の工法ごとに耐用年数とメンテナンス期間の目安が決まっていますので、再確認をしましょう。
ドレン
マンションのドレンや排水管の詰まりや劣化は、雨水の排水を妨げてしまいます。
ドレンの劣化や損傷により、建物内部への侵入を引き起こすことがあります。
ドレンは定期的な清掃と点検が重要です。
防水工事の際、ドレンを交換せず工事をしても、ドレン部分から雨漏りする可能性が残ってしまいます。
そのため、防水工事をする際には、必ず新規に改修ドレンを設置します。
ベランダ・バルコニー
ベランダ・バルコニーも屋上と同様に、防水層とドレンの劣化が雨漏りの原因となりますが、ベランダ―・バルコニー特有の原因もあります。
サッシ周りのシーリングや、笠木、クラックなどが、劣化により雨漏りの原因となります。
外壁
雨漏りは屋根やベランダ・バルコニーからと思われがちですが、外壁からも雨漏りが発生します。
外壁から雨漏りが発生する原因は、外壁の劣化と、不十分な施工です。
ひび割れや剥がれ、かけがある場合や、シーリング材の劣化が進んでいる場合は、雨水が壁を通じて内部に浸透することがあります。
マンションが雨漏りした時の対処法
マンションで雨漏りが発生した場合、迅速な対応が重要です。
ここでは、オーナーと入居者が取るべき対処法を解説します。
オーナーの対処法
- 応急処置
初期の雨漏りを発見した際は、ビニールシートを敷き、雨漏りが発生している場所にもビニールシートを被せましょう。
雨漏りが発生している場所が特定できる場合は、防水テープを貼り、隙間を埋めましょう。 - 業者に調査・工事を依頼
専門の業者による詳細な調査を行い、修繕方法の提案と見積もりをもらい依頼します。
これには、再発防止のための防水工事の提案が含まれます。 - 再発防止の点検ルール作り
雨漏りが再発しないように、定期的な建物点検のルールを設定し、再発防止を徹底します。
入居者の対処法
- 管理会社・オーナーに連絡
雨漏りを発見したらすぐに管理会社やオーナーに報告し、対応を依頼します。 - 雨漏りの記録
雨漏りの状況を写真やビデオで記録し、どのような状態であるかを詳細に伝えることができるようにします。 - 応急処置
小規模な漏れであれば、バケツやタオルを使って一時的に対応し、さらなる被害を最小限に抑えます。
雨漏り修繕と防水工事に違いはある?
工事個所 | 雨漏り | 費用 | 再発リスク | |
---|---|---|---|---|
雨漏り工事 | 部分補修 | 一時的に雨漏りを止める | 安い | 再発リスクあり |
防水工事 | 屋上全体の工事 | 雨漏りを止め再発防止 | 高い | 10~18年安心 ※耐久年数による |
雨漏り修繕
雨漏り修繕は具体的な漏れの原因を取り除く部分的な作業です。
但し、防水層全体が経年劣化している場合、漏れた所だけ直しても、修繕した場所以外から雨漏りするリスクがあります。
防水工事
防水工事は屋上全体の防水耐性を高めるための工事です。
雨漏り修理はリフォーム業者などでも工事が可能ですが、10年以上、雨漏りが再発しないように防水工事を行う場合は、技術力が必要になるため、防水工事業者が工事しなければなりません。
防水工事は、予防的な工事で、10~18年、工法によりそれ以上、雨漏りが起こらないようにするための工事です。
防水工事は雨漏り修繕より費用は高いですが、建物の資産価値を守り、住民や建物の利用者のために必要な工事です。
賃貸と分譲で異なる雨漏りの責任
雨漏りの責任は、マンションが賃貸か分譲かによって異なります。
賃貸マンション
賃貸マンションにおけるオーナー・入居者別の責任は下記の通りです。
- オーナー
共用部と専有部の修繕責任はオーナーにあります。
屋上は建物の構造上の一部であり共用部分と見なされ、屋上からの雨漏りはオーナーの責任となります。
オーナーは建物全体の維持管理を行う責任があり、雨漏りが発生した場合は速やかに修理を行う義務があります。 - 入居者
屋上からの雨漏りに関しては直接の責任はありません。
雨漏りが発生した場合は、速やかに貸主または管理会社に連絡する義務があります。
マンションオーナーむけの屋上防水ガイドも参考記事としてお読みください。
マンション屋上防水ガイド!工法種類と業者選びノウハウを解説!
分譲マンション
分譲マンションにおけるオーナー・入居者別の責任は下記の通りです。
- 管理組合
屋上は共用部分として扱われるため、屋上からの雨漏りは管理組合の責任となります。
管理組合は共用部分の維持管理を行う責任があり、修繕積立金や管理費を使って雨漏りの修理を行います。 - 区分所有者
屋上からの雨漏りに関しては管理組合の責任となります。
専有部分が雨漏りによって被害を受けた場合、管理組合に連絡し修理を依頼します。
雨漏りしたのに防水工事をしないとどうなる?
雨漏りしたのに適切な防水工事を行わないと、雨漏り以外にも問題が出てきます。
- 被害が拡大して修繕費が増える
- 建物の劣化が進む
- 家賃の減額請求や賃貸契約解除をされる
- 物件の資産価値が低下する
1つずつ解説します。
被害が拡大して修繕費が増える
最初の小さな雨漏りを見過ごすと、時間とともに雨漏りが広がり建物全体が劣化します。
躯体や、建物内部の材料、下地を痛めてしまうと、雨漏り工事以外の複雑な修繕工事を行うこととなり、修繕費用が高くなります。
建物の劣化が進む
雨水が建物内部に侵入し続けることで、建物の鉄骨やコンクリート構造を劣化させます。
特に鉄骨の錆が進行すると、鉄の強度が低下し、建物自体の強度問題につながります。
コンクリートも同様に、水分の侵入により、ひび割れや剥離が起こりやすくなり、建物全体の劣化を引き起こします。
長期間にわたる水の侵入は、建物の耐久性、耐震性を低下させ、住人の安全を奪うことになります。
雨漏りを発見したら、すぐに防水工事業者による調査と修繕を行いましょう。
家賃減額請求や契約解除
賃貸物件の場合、家賃の減額請求がされる場合があります。
契約解除を申し出る入居者の方もいるでしょう。
また、「雨漏りが起こっている物件」と知られれば、新規入居を躊躇する人も増えます。
一度失った信用を取り戻すには時間がかかってしまいます。
物件の資産価値の低下
雨漏りは、不動産価値の直接的な低下に繋がります。
物件を売却する場合、雨漏りを告知する義務があります。
雨漏りがある物件は「物理的瑕疵物件」となり、雨漏りを修繕した場合でも、雨漏りが発生した事実と修繕工事の告知義務があります。
不動産購入では、保守が行き届いた物件を選ぶ傾向があるため、防水工事を適時に行うことでマンションの長期的な資産価値は保たれます。
マンションの防水工事の流れ
マンションの防水工事は、計画的かつ段階的に進めることが重要です。
防水工事を依頼するときの流れは以下の通りです。
業者の選定
防水工事は、優良防水工事業者を選ぶことが成功に不可欠です。
「業者選びの成功=防水工事の成功」と言っても過言ではありません。
防水工事業者は全国に沢山いますが、技術力があり、かつ費用が適正な優良な防水専門業者を見分けるのは難しいでしょう。
調査・見積もり
業者による建物の調査が行われ、雨漏りの原因、損傷している箇所が明確になります。
その上で、業者が最適な防水工法を選び、見積もりが提出されるので、業者により提案が異なることがあります。
また、同じ工法、同レベルの技術力でも、費用に差が出るので、見積もりの精査が重要になります。
防水工事・雨漏り修繕
見積もりで提案された工法にて、防水工事を施工します。
雨漏りの修繕を行った後に、新しい防水層を作り、雨漏りの再発を防ぎます。
防水工事後の点検
工事完了後、業者による最終的な点検が行われます。
防水工事を依頼する側は、防水工事の基礎知識、相場、見積もりの見方を身に着けておく必要があります。
しかし、10数年に1度の工事のため、知識をつけたり、見積もりの内容を精査するのは至難の業です。
防水工事見積もり.comでは、防水アドバイザーの福島が必要な知識の解説や、見積内容の解説をし、サポートしています。
マンションの雨漏りは定期点検とメンテナンスで防ぐ
マンションの雨漏りは、定期的な点検とメンテナンスにより防ぐことができます。
防水工事には一定の耐用年数があり、その期間内に再度のメンテナンスや修繕が必要になる場合があります。
耐用年数とメンテナンス期間を知ることで、計画的なメンテナンスが可能となります。
耐用年数 | メンテナンス期間 | メンテナンス方法 | |
---|---|---|---|
ウレタン防水 | 10~15年 | 5~8年ごと | トップコート塗り替え |
シート防水 | 10~18年 | トップコート塗り替えメンテナンスフリー | 目視確認 |
改質アスファルト防水 | 12~18年 | 5~8年ごと | トップコート塗り替え |
FRP防水 | 10~15年 | 5~8年ごと | トップコート塗り替え |
防水層のメンテナンスは、基本的にはトップコートの塗り直しです。
トップコートは防水層を紫外線や衝撃から守る役割がありますが、トップコート自体が劣化します。
トップコートを塗り直すことで、防水層を保護することができます。
シート防水のみ、トップコートの塗り替えは不要です。
劣化のサインを知る
防水層の劣化は、ひび割れや剥がれなどのサインで知ることができます。
劣化の初期サインを早期に捉えることができれば、雨漏りする前に対策をすることができ、防水工事の費用も抑えることができます。
ドレンを定期的にメンテナンス
ドレンにゴミが詰まってしまうと雨水が排水されず、雨漏りが起こる場合があるため、ドレンは定期的な清掃が必須です。
また、ドレンのパイプが劣化により変形したり、割れたりすると、ドレンに隙間ができ、雨漏りが起こることがあります。
ドレンは防水工事の時に改修用ドレンを設置することで、雨漏りを防ぐことができます。
マンションの雨漏りで保険を適用するケースとは
マンションの雨漏りで保険適用の対象となるのは、自然災害が原因で防水工事を行うことになったケースなどに適用されます。
- 強風で物が飛んできて防水層が傷ついた
- 屋上に設置していた室外機が倒れ防水層が傷ついた
- 強風でシート防水が剥がれてしまった
火災保険を適用するには、とにかく被害現場の状況が分かる写真を撮ることが重要です。
業者さんに依頼して写真を撮ってもらい、保険会社に提出する書類を用意しましょう。
また、風災の特約に入っていない場合は、自然災害での保険適用が難しいため要注意です。
保険の詳細条件や適用範囲は、保険会社との契約内容によって異なるため、各自の保険契約を確認しましょう。
防水工事は業者により2倍以上の費用差がつく
防水工事の見積もりを依頼した際に、業者ごとの費用に大きな差が生じることがあります。
特に2倍以上の費用差がつくケースも少なくありません。
その理由と注意点について解説します。
防水工事の費用構成
防水工事の費用は、主に以下の要素で構成されています。
- 材料費
使用する材料の種類と品質により大きく変わる - 作業費
現場の広さや形状、作業の難易度によって異なる - 下地処理費
既存の下地の状態により、追加の修復作業が必要になることがある
費用差が生じる主な理由
材料の違い
高品質の防水材料を使用する業者は、当然ながらコストが高くなります。
安価な材料を使うと費用を抑えることができますが、耐久性や防水効果が低い可能性があります。
施工方法の違い
選んだ工法により、工事日数が変わるため人件費も変わります。
例えば、塗膜防水の場合、乾かす時間が掛かるので費用に反映されます。
会社規模の違い
職人さんの人件費以外にも、会社の規模が大きくなると事務方の人数も増えます。
その場合、会社を維持するための費用がかかるため、全体のコストに反映されます。
防水工事の費用は、業者によって大きく異なることがありますが、その理由は使用する材料、施工方法、会社規模など多岐にわたります。
見積もりを取る際には、費用だけでなく、これらの要素も総合的に考慮して業者を選ぶことが重要です。
最終的には、安さだけでなく、信頼できる業者を選ぶことが、長期的に見て建物を守るための最良の選択となるでしょう。
安くて品質の良い防水工事業者を最大3社紹介
前回の防水工事より10年以上経っている場合は、急な雨漏りで慌ててしまう前に、点検も兼ねて業者に見て貰うと安心です。
もし、今回屋上全体の工事が必要ではない場合でも、簡単な補修やメンテナンスをしておくことで雨漏りを防げます。
また、優良な防水専門業者さんを見つけておくことで、急な雨漏りの際にも、安心して依頼することが出来ます。
防水工事見積もり.comの厳しい審査を行った優良業者を最大3社紹介させて頂き、現地調査することが出来ます。
また、12,000枚以上の見積もりを見てきた防水工事アドバイザー福島が、業者より提案された工法と見積もりを診断し、失敗しない防水工事のアドバイスをさせて頂きます。
最終的に、現在の業者の提案・見積もりと、優良業者の提案・見積もりを比較し、信頼できる業者を採用しましょう。