メンブレン防水とは? 種類、工法、注意点について防水工事アドバイザーが解説

更新日:2025年3月18日 BY 福島 慎介
メンブレン防水とは? 種類、工法、注意点について防水工事アドバイザーが解説

メンブレン防水って、一体どんな防水方法なんだろう?」「シート防水や塗膜防水とは何が違うの?」 

業界内では耳にするものの、一般的には馴染みの薄い「メンブレン防水」。しかし、建物の防水対策において非常に重要な役割を担っている技術です。

この記事では、防水工事アドバイザーの福島が、メンブレン防水の基本から、具体的な種類、工法、そして、そのメリット・デメリットまで、専門的な知識を分かりやすく解説します。 

メンブレン防水に興味を持ち、その内容を知りたい方、より深く防水技術を理解したい方は、ぜひ読み進めてください。

この記事の監修者
福島 慎介
福島 慎介

神奈川県出身 一般社団法人 防水工事推進協会 代表理事 防水アドバイザーとして12,000枚以上の見積りや防水工事を診断 お客様の立場・視点から分かりやすくお伝えします。

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建物の防水対策として用いる工法
<建物の防水対策として用いる工法>

メンブレン防水とは、建築物の屋上やバルコニー、外壁などの防水対策として用いられる工法の一つです。

液体状またはシート状の防水材料を塗布または貼り付けることで、連続した防水層(メンブレン)を形成し、雨水などの浸入を防ぎます。

ウレタン防水密着工法の断面図
<ウレタン防水密着工法の断面図>
FRP防水の断面図
<FRP防水の断面図>

ウレタン防水、他の防水工法と比較して、施工性や追従性に優れている点が特徴です。

複雑な形状の場所にも比較的容易に施工でき、建物の動きや振動にも柔軟に対応できます。そのため、新築はもちろん、改修工事においても幅広く採用されています。

メンブレン防水は、使用する材料や施工方法によって、大きく分けて「シート防水工法」と「塗膜防水工法」の2種類に分類されます。

また、これらの工法を組み合わせた「複合防水工法」も存在します。それぞれの特徴を見ていきましょう。

メンブレン防水の種類について、1点注意点があります。

膜状防水層を形成する工法の総称であり、アスファルト防水も広い意味ではメンブレン防水に含まれます。

しかし、一般的に業界内では、メンブレン防水という言葉はシート防水や塗膜防水を指すことが多いかもしれません。

その為、このセクションではアスファルト防水を除いた工法を紹介していきます。

シート防水工法

シートを貼り付けて防水層を形成する防水工法
<シートを貼り付けて防水層を形成する防水工法>
塩ビシート機械固定法の断面図
<塩ビシート機械固定法の断面図>

シート防水工法は、合成ゴムや塩化ビニル樹脂などのシート状の防水材料を使用する工法です。

工法素材特徴
塩ビシート防水塩化ビニル樹脂耐候性、耐摩耗性に優れており、歩行頻度の高い場所にも適しています
非加硫ゴムシート防水合成ゴム(エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR))耐候性、耐薬品性に優れており、幅広い用途に使用されます
加硫ゴムシート防水合成ゴム(エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、カーボンブラックなどの補強材、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤など)高い伸縮性を持ち、建物の動きに対する追従性に優れています

工場で均一な品質で製造されたシートを、接着剤や機械的な固定具を用いて下地に貼り付けていきます。


一般的に、塗膜防水よりも耐久性が高い傾向にあります。

ある程度の面積であれば、比較的短期間で施工が可能です。

塗膜防水工法

液状の防水材を下地に塗布して防水層を形成する工法
<液状の防水材を下地に塗布して防水層を形成する工法>
ウレタン防水通気緩衝工法の断面図
<ウレタン防水通気緩衝工法の断面図>

塗膜防水工法は、液状の防水材料を塗布し、化学反応によって硬化させて防水層を形成する工法です。

防水工法素材特徴
ウレタン塗膜防水主剤:TDI(トリレンジイソシアネート)
硬化剤:MOCA又はMBOCA(3,3′-ジクロロ-4,4′-ジアミノジフェニルメタン)
伸縮性が高く、幅広い下地に適応できます
密着性にも優れています
FRP塗膜防水主剤:ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂
補強材:ガラスマット
強度が高く、耐久性に優れています
硬化速度が速いのも特徴です

ウレタン系、FRP系など、様々な種類の材料があり、用途や性能に合わせて選択できます。

下地の形状に柔軟にフィットし、継ぎ目のないシームレスな防水層を形成でき、水の侵入リスクを低減することが大きな特徴です。

細かい部分や複雑な形状の場所にも容易に施工できます。

複合防水工法

アスファルトパネル複合工法・バリボード仕様 施行中
<アスファルトパネル複合工法・バリボード仕様 施行中>

複合防水工法は、シート防水などの他の防水工法と塗膜防水のそれぞれの長所を活かし、組み合わせることでより高い防水性能を目指す工法です。

建築学会/FRP防水工事施工指針によると、FRPとウレタンゴムを重ね塗りする仕様が推奨されています。

複合防水工法は以下3つのメリットがあります。

  • 単独の工法よりも高い防水性能が期待できます。
  • それぞれの工法の弱点を補い合い、耐久性を向上させることができます。
  • 下地の状況や求められる性能に合わせて、様々な組み合わせが可能です。

下地の動きが大きい箇所にはシート防水を使用し、複雑な形状の取り合い部にはウレタン塗膜防水を用いるなど、状況に合わせて最適な組み合わせを選択します。

メンブレン防水は、適切に施工されれば高い防水効果を発揮しますが、永続的に効果が持続するわけではありません。紫外線や熱、建物の動きなどによって、防水層は徐々に劣化していきます。

工法ごとの耐用年数とメンテナンス方法は以下の通りです。

工法耐用年数メンテナンス方法
ウレタン塗膜防水10~15年5~8年ごとにトップコート塗り直し
FRP塗膜防水10~15年5~8年ごとにトップコート塗り直し
塩ビシート防水12~18年トップコート塗り替えのメンテナンスフリー
加硫ゴムシート防水10~12年5~8年ごとにトップコート塗り直し
トップコート塗布
<トップコート塗布>
改修ドレン設置
<改修ドレン設置>
笠木のコーキング
<笠木のコーキング>

メンブレン防水の効果を維持するためには、定期的な点検メンテナンスが不可欠です。防水層のひび割れや剥がれ、膨れなどの異常が見られた場合は、早めに専門業者に相談し、適切な補修を行うようにしましょう。

メンブレン防水は、下地の状態や施工方法によって性能が大きく左右されます。信頼できる防水工事業者を選び建物に合った材料と工法で、施工してもらうことが重要です。

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メンブレン防水は、建物を雨水から守るための重要な役割を担っています。

その種類や特徴を理解し、適切なメンテナンスを行うことで、建物の寿命を延ばすことに繋がります。ご自身の建物の状況に合わせて、最適な防水工法を選択するようにしましょう。

防水工事については以下の記事で詳しく解説しておりますので、併せてご参考にしてください。

カテゴリー :防水工事全般  タグ:FRP防水 ウレタン防水 シート防水 メンブレン防水 

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