防水層とは?屋上・ベランダを雨漏りから守る防水層と工法種類を防水専門家が解説
建物を雨水や劣化から守るために欠かせない「防水層」。
屋上やベランダ・バルコニー、外階段などの雨にさらされる場所に施され、雨水が侵入しないよう建物を守っています。
この記事では、防水層の役割から防水工法の種類、防水層の改修サインまで、防水工事アドバイザーである福島が分かりやすく解説します。
■福島 慎介
神奈川県出身 一般社団法人 防水工事推進協会 代表理事 防水アドバイザーとして12,000枚以上の見積もりや防水工事を診断 お客様の立場・視点から分かりやすくお伝えします。
防水層とは?

防水層とは、建物に雨水が浸入するのを防ぐための防水効果がある層のことです。主に、屋上、ベランダ、バルコニーなどに施工され、建物の寿命を延ばし、資産価値を維持する上で非常に重要な役割を果たします。
防水層の役割は以下の2つのポイントがあります。
- 雨水の浸入を防ぎ、建物内部の腐食や劣化を防止する
- 建物の構造体を保護し、耐久性を保つ
防水層は、単に水を防ぐだけでなく、紫外線や温度変化も防ぐ役割があります。
様々な種類の防水材が開発され、防水層を構築する工法も数多くあります。
建物の構造や下地の状態、雨漏りの状況に合わせて、適切な防水工法を選択し、施工を行います。
防水層の工法種類・耐用年数・工事費用は?

防水層には主に3つの種類があり、それぞれ特徴、耐用年数、工事費用が異なります。代表的な3つの防水層をご紹介します。
塗膜防水(ウレタン・FRP)

塗膜防水とは、液状の防水材を塗り重ねて防水層を形成する方法です。
複雑な形状にも対応でき、比較的安価で施工できます。ウレタン防水は伸縮性に優れ、FRP防水は強度に優れています。
ウレタン防水とFRP防水には、それぞれ密着工法と通気緩衝工法があります。
耐用年数や単価・特徴は以下の通りです。
| 工法 | 特徴 | 単価 | 耐用年数 | 雨漏り有効度 |
|---|---|---|---|---|
| ウレタン防水密着工法 | ・複雑な形状の建物にも施工出来る ・継ぎ目のない防水層 | 5,000~6,000円 | 10年程度 | ★☆☆☆☆ |
| ウレタン防水通気緩衝工法 | ・雨漏りに強い ・下地に溜まった湿気を逃がす | 6,000~7,500円 | 13~15年 | ★★★★★ |
| FRP防水密着工法 | ・ガラス繊維と組み合わせて一体にした防水塗膜 ・継ぎ目のない防水層 | 6,000~7,000円 | 10~12年 | ★★☆☆☆ |
| FRP防水通気緩衝工法 | ・雨漏りに強い ・下地に溜まった湿気を逃がす | 7,500~8,500円 | 13~15年 | ★★★★★ |
ウレタン防水は特に人気の工法で、採用率が非常に高い工法です。FRP防水は耐久性が高く、歩行が多いベランダ・バルコニーで採用される傾向にあります。
シート防水(塩ビシート・ゴムシート)

シート防水とは、塩化ビニルやゴムなどのシート状の防水材を貼り付けて防水層を形成する方法です。均一な厚みで防水層を確保でき、耐久性に優れています。
シート防水には、塩ビシート防水とゴムシート防水があり、それぞれ接着工法と機械固定工法があります。
耐用年数や単価、特徴は以下の通りです。
| 工法 | 特徴 | 単価 | 耐用年数 | 雨漏り有効度 |
|---|---|---|---|---|
| 塩ビシート防水接着工法 | ・下地を選ばない ・工期が短い ・シートと下地が一体化 | 6,000~7,000円 | 12~15年 | ★★★★☆ |
| 塩ビシート防水機械固定工法 | ・下地を選ばない ・雨漏りに強い ・下地と接着面が少なく揺れに強い ・工期が短い | 6,500~7,500円 | 15~18年 | ★★★★★ |
| ゴムシート防水接着工法 | ・伸縮性や揺れへの追従性に優れている ・初期費用が安い | 5,000~6,000円 | 10〜12年 | ★★☆☆☆ |
| ゴムシート防水機械固定工法 | ・伸縮性や揺れへの追従性に優れている ・初期費用が安い | 5,500~6,500円 | 10~15年 | ★★★☆☆ |
塩ビシート防水とゴムシート防水では、塩ビシート防水の方が圧倒的に採用率が高く、塩ビシート防水はウレタン防水と同様に主流の防水工法となっています。
ゴムシート防水の方が費用が安いですが、外的な刺激による耐性に弱く、破れることがあるため、特に近年はあまり採用されません。
ただし外的な刺激に強いゴムシートも開発されており、ゴムシート防水も人気が出る可能性はあります。
アスファルト防水

アスファルト防水とは、加熱して溶解したアスファルトと専用の防水シートを使用し、層を重ねて施工する方法です。これは「熱工法」と呼ばれ、防水工事の中で最も古くから行われており、絶対的な実績のある防水工法です。
| 特徴 | 単価 | 耐用年数 | 雨漏り有効度 | |
|---|---|---|---|---|
| アスファルト防水熱工法 | ・大型のビルやマンション・施設の新築時に採用 ・歴史があり、信頼性が非常に高い工法 ・煙や臭いが出る | 10,000~15,000円 | 5mm:15~20年 10mm:25~30年 | ★★★★★ |
| 改質アスファルト防水常温粘着工法 | ・アスファルト防水の改修時に採用 ・剥離紙を剥がして接着 ・煙や臭いが出にくい | 6,500~7,500円 | 単層4mm:12~15年 複層6mm:15~20年 | ★★★★★ |
| 改質アスファルト防水トーチ工法 | ・アスファルト防水の改修時に採用 ・専用のシートをバーナーで炙りながら貼り付け ・煙や臭いが出る | 5,000~6,000円 | 単層2mm:10~12年 複層4mm:13~18年 | ★★★★☆ |
熱工法は、主に公共工事や大型の新築物件に採用されています。一方、改質アスファルトシート防水の常温粘着工法とトーチ工法は、主に改修工事で採用されることが多いです。
防水層の改修が必要な劣化症状・時期とは?

改修・メンテナンスが必要な劣化症状と時期について解説します。
改修・メンテナンスが必要な劣化症状
防水層の改修・メンテナンスが必要な症状を紹介します。ここでは防水工事の緊急度別に紹介していきます。
緊急度レベル5:雨漏り・防水層の剥がれ

建物内部で雨漏りが発生している場合や、防水層が完全に剥離して下地が露出している場合、または大きな亀裂や多数のひび割れが確認される場合は、防水層の機能が著しく低下している状態です。
緊急度レベル4:雨漏り・防水層の剥がれ

雨漏りが発生したことが形跡として出ている。または、防水層の膨らみ(ふくらみ・浮きの発生)が見られる。
または、防水層が剥がれ、破れている箇所がある。
これらは、防水層の明らかな劣化症状である為、雨漏りする可能性が非常に高まっている状態です。
緊急度レベル3:ひび割れ・水溜まり

防水層に複数のひび割れ、塗膜防水の表面が劣化して粉っぽくなる(チョーキング現象)状態や、排水がうまくいかず水たまりが発生しやすい場合は、防水層の劣化が中程度に進んでおり、雨漏りが発生する一歩手前の状態です。
緊急度レベル2:シートの浮き、小さなクラック

表面に軽いひび割れ(ヘアクラック)が発生している状態や、シート防水の場合にはシートの端が浮き上がっている箇所がある場合、防水層が軽度に劣化しており、変形や損傷が発生し始めている状態です。
緊急度レベル1:トップコートの剥がれ

防水層の表面に塗られたトップコートが薄くなっていくと、剥がれ、変色が見られが起こります。
10年ほど前に防水工事をしておりトップコートのメンテナンスをしていない場合、防水層を保護するトップコートが劣化し、防水層の劣化が進みやすくなっている状態です。
改修・メンテナンスが必要な時期

防水層の改修時期は、防水工法の種類や現状の状態によって異なりますが、一般的には以下の時期が目安となります。
| 防水工法 | 耐用年数 | メンテナンス時期 |
|---|---|---|
| ウレタン防水密着工法 | 10年程度 | 5~8年ごとにトップコート塗り直し |
| ウレタン防水通気緩衝工法 | 13~15年 | 5~8年ごとにトップコート塗り直し |
| 塩ビシート防水接着工法 | 12~15年 | トップコート塗り替えのメンテナンスフリー (※)トップコートを塗る場合はメンテナンスが必要 |
| 塩ビシート防水機械固定工法 | 15~18年 | トップコート塗り替えのメンテナンスフリー (※)トップコートを塗る場合はメンテナンスが必要 |
| ゴムシート防水接着工法 | 10~12年 | 5~8年ごとにトップコート塗り直し |
| ゴムシート防水機械固定工法 | 10~15年 | 5~8年ごとにトップコート塗り直し |
| FRP防水密着工法 | 10~12年 | 5~8年ごとにトップコート塗り直し |
| FRP防水通気緩衝工法 | 13~15年 | 5~8年ごとにトップコート塗り直し |
| アスファルト防水(熱工法) | 5mm:15~20年 10mm:25~30年 | 5~8年ごとにトップコート塗り直し |
| 改質アスファルト防水 | 5mm:15~20年 10mm:25~30年 | 5~8年ごとにトップコート塗り直し |
上記はあくまで目安ですので、定期的な点検を行い、劣化状況に応じて早めに改修を行うことが重要です。定期的なメンテナンス(清掃や軽微な補修)を行うことで、防水層の寿命を延ばすことができます。
改修・メンテナンスの際に行う防水工事についての詳しい解説は以下の記事でしておりますので、こちらもご参考にしてください。
防水層についてのよくある質問
防水層についてのよくある質問に、防水工事アドバイザーが回答します。
- 防水層の材質にはどのようなものがある?
- 防水層の補修や交換はいつ行う必要がある?
- 防水層を自分で施工することは可能?
防水層の材質にはどのようなものがある?
防水層の材質で代表的なものは下記の5つです。
- ウレタン樹脂
- 塩ビシート
- 合成ゴムシート
- アスファルト+ルーフィング
- ポリエステル樹脂+ガラスマット
■塗膜防水
ウレタン樹脂やFRP(繊維強化プラスチック)などの液体材料を塗って膜を作る工法
| 工法名 | 主な材質 | 工法の特徴 |
|---|---|---|
| ウレタン防水 | ウレタン樹脂 | 継ぎ目のない防水膜ができ、複雑な形状の屋上やベランダにも施工しやすい |
| FRP防水 | ・ポリエステル樹脂 ・ガラスマット(ガラス繊維) | 強度と耐摩耗性が高く、ベランダや屋上など歩行頻度の高い場所に適している |
■シート防水
塩化ビニルや合成ゴム製のシートを貼り付ける工法
| 工法名 | 主な材質 | 工法の特徴 |
|---|---|---|
| 塩ビシート防水 | ポリ塩化ビニル製のシート | シートの厚みが均一で品質が安定しており、耐候性にも優れている |
| ゴムシート防水 | 合成ゴム製のシート | 伸縮性が高く、建物の動きに追従しやすい |
■アスファルト防水
熱で溶かしたアスファルトと防水シートを重ねる工法
| 工法名 | 主な材質 | 工法の特徴 |
|---|---|---|
| アスファルト防水 | ・アスファルト ・ルーフィング(防水シート) | 信頼性の高い防水方法で、耐久性や防水性能に優れている |
それぞれの工法について、詳細は「防水工事とは?工事の種類・耐用年数・単価まで徹底解説」で解説しております。
防水層の補修や交換はいつ行う必要がある?
防水層の補修や交換が必要となるタイミングは、主に次の2つです。
- 耐用年数が到来したとき
- 劣化症状が現れたとき
防水層の耐用年数は工法によって異なりますが、一般的にはおおよそ10〜20年が目安とされています。
そのため、耐用年数に達したタイミング、もしくは下記のような劣化サインが確認された場合には、年数に関わらず防水業者による点検を受けることをおすすめします。
| 症状 | 詳細 | 危険度 |
|---|---|---|
| シートの破れ・亀裂・穴 | シート防水そのものが破損している状態。 建物内部へ直接雨水が浸入してしまう。 | ★★★★★ |
| 膨れ | 防水層内部に水が浸入している状態。 | ★★★★☆ |
| シート接合部の口開き | シート同士のつなぎ目(接合部)が剥がれている状態。 下地へ水が浸入しやすくなり、雨漏りやシートの剥がれを引き起こす。 | ★★★★☆ |
| 雑草が生えている | 雑草が成長してシートを突き破り、深刻な雨漏りの原因になりかねない状態。 | ★★★★☆ |
| シートの浮き・剥がれ | シートの端部や接合部がめくれ上がっている状態。 防水層全体の劣化を早める原因につながる | ★★★☆☆ |
| 水たまりができる | 塗膜系の防水層の場合、常に水に浸かっている状態が長期間続くと、接着効果が弱まり、防水層の表面の劣化を早める可能性がある | ★★☆☆☆ |
| トップコートの剥がれ・色褪せ | 防水層を守る鎧が剥がれた状態。 防水シートが直接紫外線や熱にさらされるので、劣化のスピードが一気に加速する。 | ★★☆☆☆ |
症状の内容や進行度によって、部分補修で済む場合もあれば、防水層の全面改修が必要なこともあります。
詳細は「シート防水の劣化症状の全て!パッチ補修と全体修繕に分かれるポイントとは?」でも解説しております。
防水層を自分で施工することは可能?
防水層の施工をご自身で行うことは、基本的にはおすすめできません。
ベランダなど小さい面積であればご自身でDIYしても良いかもしれません。
ただし、雨漏りをしているなど、状態が悪い場合は防水専門業者に依頼した方がいいです。
防水工事では、既存の防水層や下地の状態を調査し、その結果に応じて最適な防水工法や材料を選定する必要があります。
特に、下地に水分が残っている場合や雨漏りがある場合は、専門的な調査が欠かせません。
DIY施工後に不具合が生じて業者に依頼すると、防水層の撤去費用が追加でかかるため、結果的に割高になることもあります。
確実な仕上がりと長期的な防水性能を得るためには、専門業者に依頼するのが安心です。
より詳細な解説は「防水工事でDIYは難しいですか?」にて掲載しておりますので、ぜひご覧ください。
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