屋上防水工事は修繕費と資本的支出はどっち?節税対策まで解説!

更新日:2024年7月29日 BY 福島 慎介

防水工事が修繕費になるか資本的支出になるかは、不動産オーナーにとって重要な関心事です。

不動産経営で利益を増やしていくために、屋上防水を修繕費として経費計上したいと思うのではないでしょうか。

防水工事見積り.comの防水工事アドバイザーである福島のもとへ「防水工事を修繕費で処理できないか?」という質問が多く寄せられます。

結論から言うと、防水工事はケースにより修繕費にも資本的支出が決定されます。

本記事では、防水工事における修繕費と資本的支出について、判断基準やケースと合わせて、防水工事アドバイザーが解説していきます。

この記事の監修者
福島 慎介
福島 慎介

神奈川県出身 一般社団法人 防水工事推進協会 代表理事 防水アドバイザーとして12,000枚以上の見積りや防水工事を診断 お客様の立場・視点から分かりやすくお伝えします。

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防水工事の勘定科目はおおむね修繕費として経費計上することができます。

しかし、場合によっては資本的支出として見なされ、固定資産として税務処理をすることにもなりかねません。

国税庁のホームページ【第8節 資本的支出と修繕費】には、工事における資本的支出と修繕費の扱いが詳しく書かれています。

国税庁のホームページ【第8節 資本的支出と修繕費

ポイントは、対象となる工事が建物を維持・現状回復するために行われるものであるか、資産価値を向上させるために行われるものであるかの判断となります。

alt:修繕費と資本的支出
<雨漏り修理 と 大規模修繕(足場が付いてる)>

防水工事の税務処理は、修繕費か資本的支出のどちらかで処理することになります。

物件のオーナーであれば節税のために修繕費として計上したいと考えている方も多いと思います。

まずは修繕費と資本的支出について解説します。

修繕費とは?

修繕費は、不動産の状態維持や修理に投じた費用です。

これには、防水を保つための日常的なメンテナンスやトップコートの塗り替えなども該当します。

国税庁の【第8節 資本的支出と修繕費】には以下のように記載されています。

「法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額が修繕費となる」

修繕費の税務処理としては、費用として発生した事業年度の経費として処理することができます。

資本的支出については資産計上をされ課税対象になりますが、修繕費の支出は課税対象にならないので税負担を減らすことができます。

会計処理においても、1期の事業年度内の経費として計上するだけですので簡単に処理できます。

資本的支出とは?

新しく不動産を取得したり、既存の不動産に投資をすることで不動産価値を上げる支出のことです。

増築・用途の追加、リフォーム、大規模修繕などが該当します。

国税庁の【第8節 資本的支出と修繕費】には以下のように記載されています。

「法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となる」

税務処理としては、 資本的支出は固定資産として処理されます。

価値は、減価償却として時間の経過に合わせて費用として計上されていきます。

年間で経費計上できる金額の計算は下記の通りです。

年間減価償却費= (取得コスト-残存価値)÷耐用年数

個別に定められた耐用年数を元に、分割しながら均等に費用を分配することになります。

年間減価償却費の部分以外は固定資産として計上されるため、税金がかかることになります。

資本的支出で計上した場合のメリットとしては、固定資産として計上されるため、財務諸表上の資産と純資産は増えるので、金融機関や投資家、売却する場合には若干の好材料となります。

防水工事が修繕費に分類されるか、資本的支出に分類されるかは防水工事の内容、規模、効果の期間によって異なります。

しかし実際は、防水工事は修繕費としてみなされるケースが多いです。

防水工事は「雨漏りで劣化した屋上を、修理するために行うもの」なので、建物の現状維持・メンテナンスにおいて必要な工事になります。

そのため、修繕費に当てはまるとされています。

※今回記載している内容は、マンション・アパートオーナー向けの内容となります。

記載していることは絶対ではありません。

最後は個人の判断、または顧問の税理士に相談してみてください。

修繕費屋根の雨漏りを止めるために行った防水工事
台風で室外機が飛ばされたことによる屋上防水のシートの破け・タイルの破損
ベランダの手すりがさびついたり、塗装が剥げたことによる原状回復
経年劣化による外壁塗装 (塗装やシーリングなどをグレードアップをした場合には資本的支出になる可能性がある)
資本的支出ウレタン防水をアスファルト防水に変更して耐用年数を伸ばした
階段に手摺を付けてのぼりやすくした
見た目を良くするための外壁塗装をした
屋上防水工事をしたときに、まとめて工事した方が安くなるのでついでに外壁塗装を行った
修繕のついでに、断熱材や遮熱トップコートなどでグレードアップした

修繕費として見なされるケース

alt:防水工事における修繕費
<修繕費の内容>

屋上防水工事は「雨漏りで劣化した屋上を元の状態に戻すためにおこなうもの」もしくは「建物の維持管理に必要なもの」であり、修繕費の概念に当てはまるとされるためです。

  • 維持管理が目的の定期的な防水工事・外壁塗装
  • 原状回復が目的の防水工事・雨漏りの修理

以上の目的であれば修繕費として処理することができます。

修繕費として認められる事例

具体的に修繕費として認められるよくある事例は下記の通りです。

  • 屋根の雨漏りを止めるために行った防水工事
  • 台風で室外機が飛ばされたことによる屋上防水のシートの破け・タイルの破損 
  • ベランダの手すりがさびついたり、塗装が剥げたことによる原状回復
  • 経年劣化による原状回復のための外壁塗装 (塗装やシーリングなどをグレードアップをした場合には資本的支出になる可能性がある)

雨漏りを止めるために行った工事でも、雨漏りを止めて防水工事をするだけでなく追加で屋根材を設置した場合などは、資本的支出に該当します。

あくまで「維持管理・原状復帰」が修繕費として認められる原則です。

屋上防水工事費用が資本的支出にあたるケース

alt:防水工事における資本的支出
<防水工事の資本的支出>

屋上防水工事の費用が、固定資産取得時の価額を増加させる工事を行った場合は、資本的支出に該当します。

具体的には下記のような工事です。

  • 防水方法を変更して耐用年数が伸びる工事
  • 老朽化のため大規模リフォームと同時に行う防水工事
  • より長く持つフッ素塗装にする コーキングのグレードを上げる
  • 廊下の階段に、美観のために長尺シートを貼る

上記の工事は原則的に資本的支出(固定資産)として処理することになります。

資本的支出として見なされる事例

具体的に資本的支出として見なされる事例は下記の通りです。

  • ウレタン防水をアスファルト防水に変更して耐用年数を伸ばした
  • 階段に手摺を付けてのぼりやすくした
  • 見た目を良くするための外壁塗装をした
  • 屋上防水工事をしたときに、まとめて工事した方が安くなるのでついでに外壁塗装を行った
  • 修繕のついでに、断熱材や遮熱トップコートなどでグレードアップした

実際、工法などを変更せずとも防水塗料を塗り直した場合などでも耐用年数が伸びるケースがあります。

これは、塗料や技術が最新のものだった場合に起こります。

これらは耐用年数が伸びたとしても、修繕費として認められているようです。

alt:防水工事の耐用年数
<防水工事の耐用年数>

防水工事の耐用年数(減価償却期間)は10年〜15年です。

鉄筋コンクリート造のマンションやビルの法定耐用年数は47年、木造住宅の耐用年数は22年と定められていますので、建物の耐用年数とは大きく差があります。

防水工事の費用を資本的支出として減価償却する場合は下記のように計算をします。

年間減価償却費 =(防水工事費用 – 残存価値)÷ 防水工事の耐用年数

具体的な事例として、10年の耐用年数を持つ防水工事の場合、定額法による年間減価償却費は次のように計算されます。防水工事費用を300万円とし、残存価値は0円だとします。

( 300万円 – 0円)÷ 10年 = 30万円

上記計算によると、30万円が経費として計上することができ、270万円は固定資産として税務処理をすることになります。

つまり270万円に対し税金がかかることになります。

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防水工事は、防水工事の専門業者2~3社から施工提案をしてもらうことが大切です。

もし外壁塗装業者やリフォーム業者に見積りを依頼されているようでしたら、防水工事業者にも現地調査をしてもらい、見積もりをしてもらいましょう。

カテゴリー :防水工事全般  タグ:不動産投資 修繕 屋上防水 防水工事