FRP防水の浮きの原因と補修方法とは?

更新日:2025年12月1日 BY 福島 慎介
FRP防水の浮きの原因と補修方法とは?

ベランダやバルコニー、屋上などで採用されているFRP防水

強靭で継ぎ目のない美しい防水層を形成しますが、床が浮いているのを発見して不安に思ったことはありませんか?

この「浮き」や「膨れ」は、FRP防水の劣化サインであり、放置すると雨漏りの原因となるため早期の対処が不可欠です。

この記事では、FRP防水に浮きが発生する主な原因から、症状のレベルに応じた適切な補修方法、なぜ防水工事業者への相談が必要なのかを徹底的に解説します。

この記事の監修者
福島 慎介
福島 慎介

神奈川県出身 一般社団法人 防水工事推進協会 代表理事 防水アドバイザーとして12,000枚以上の見積もりや防水工事を診断 お客様の立場・視点から分かりやすくお伝えします。

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FRP防水の浮きが起こる要因
<FRP防水の浮きが起こる要因>

FRP防水の浮きは、単一の原因ではなく、複数の要因が絡み合って発生することがあります。

主な原因は以下の5つです。

原因原因の詳細ポイント
下地に含まれる水分の蒸発下地内の水分が太陽熱で気化し、水蒸気が防水層を内側から押し上げる。最も多い原因。施工前の下地の十分な乾燥が不足
施工不良下地清掃やプライマー塗布の不備、樹脂内の空気を抜く「脱泡」作業の不足による密着不良。職人の技術力に大きく左右される。
経年劣化トップコートが紫外線で劣化し、防水層本体もダメージを受けて浮きに繋がる。定期的なトップコートの塗り替えで予防(5~8年)
下地の動きやひび割れ地震や温度変化による建物の動きに、硬いFRP防水層が追従できずに割れる。通気緩衝法を選択するか、1プライ工法ではなく2プライ工法で施工することで、回避しやすい
不適切な材料の使用樹脂と硬化剤の配合ミス、気温や下地に合わない材料の選択など、専門知識不足によるもの。材料の特性を熟知した防水工事業者による施工が必要。

下地に含まれる水分の蒸発

浮きの原因として最も多いのが、防水層の下地(コンクリートなど)に含まれる水分の蒸発です。

FRP防水層は水だけでなく水蒸気も通しにくい性質を持っています。

そのため、施工時に下地が十分に乾燥していなかったり、小さな亀裂から水分が侵入したりすると、その水分が太陽熱などで温められて気化します。

この逃げ場を失った水蒸気が、防水層を内側から押し上げてしまい、浮きや膨れとなって現れるのです。

特に、夏場の強い日差しに長時間照らされることで、発生しやすくなります。

施工不良

FRP防水工事の品質は、職人の技術力に大きく左右されます

施工時のわずかなミスが、数年後に「密着不良」として浮きの原因になることがあります。

  • 下地処理の不備
    下地にゴミやホコリ、油分が残っていると、プライマー(接着剤)がしっかり密着しません。
  • プライマーの塗り忘れ・不足
    防水層と下地を接着させるプライマーの塗布が不十分だと、接着力が弱まり剥がれや浮きにつながります。
  • 脱泡作業の不足
    ガラスマットを敷き、ポリエステル樹脂を塗ったあと、ローラーで内部の空気を抜き取る脱泡作業を行います。この作業が不十分だと、残った空気が浮きの原因となります。

経年劣化

FRP防水の表面に塗られているトップコートは、紫外線や雨風から防水層本体を守る役割を担っていますが、5年程度で劣化が始まります。

トップコートが劣化して剥がれると、その下の防水層がむき出しになります。

防水層が直接紫外線や風雨に晒されることで劣化が進み、ひび割れや剥がれ、浮きを引き起こすのです。

定期的なトップコートの塗り替えメンテナンスが、浮きを予防する上で非常に重要です。

下地の動きやひび割れ

建物は地震温度変化によって、常にわずかに動きます。

FRP防水は硬い性質を持つため、建物の大きな動きや下地のひび割れに追従できず、引っ張られて下地から剥がれてしまうことがあります。

これが浮きの原因となるケースです。

塗料や材料の選択や使用方法が不適切

FRP防水には、主剤と硬化剤を混ぜて化学反応で硬化させるポリエステル樹脂が使われます。

この際の配合比率の間違いや、気温に適さない硬化剤の選択、下地に合わないプライマーの使用など、材料の選択や使用方法が不適切だと、正常な硬化や密着が得られず、後々の浮きや剥がれにつながります。

FRP防水の浮きの補修は、症状の範囲や程度によって大きく2つの方法に分けられます。

  • 浮きが広範囲・多数発生している場合の対応
  • 浮きが部分的・小規模の場合の対応

自己判断でDIYを行うと症状を悪化させる危険があるため、まずは専門家による診断を受けることを推奨します。

浮きが広範囲・多数発生している場合

浮きが広範囲・多数発生
<浮きが広範囲・多数発生>

浮きがベランダの広範囲に及んでいたり、数カ所に点在していたりする場合は、下地全体に問題がある可能性が高いです。

この場合は「全面補修」が必要となります。

全撤去・再施工

全撤去・再施工
<全撤去・再施工>

既存のFRP防水層をすべて剥がして撤去し、下地処理からやり直して新たにFRP防水を施工する方法です。

  • メリット
    浮きの根本的な原因(下地の水分や施工不良など)を完全に解決できるため、最も確実で耐久性が高い
  • デメリット
    防水層撤去の費用や廃材処分費がかかるため、コストが最も高くなり、工期も長くなる

密着工法(撤去工法)

密着工法(撤去工法)
<密着工法(撤去工法)>

既存の防水層の上から、下地処理を行った上で新しい防水層を塗り増しして施工する方法です。

  • メリット
    撤去費用がかからないため、コストを抑えられ、工期も短く済む。
  • デメリット
    既存の防水層の劣化が激しい場合や、下地の水分が原因で浮いている場合には適用できない。無理に施工すると、すぐに再発するリスクがある。

浮きが部分的・小規模の場合

浮きが部分的・小規模
<浮きが部分的・小規模>

浮きが数cm程度で、数カ所に限定されている場合は「部分補修」で対応できる可能性があります。

【FRP防水 部分補修の手順】

1.浮き部分の除去

浮き部分の除去
<浮き部分の除去>

カッターやサンダーで浮いている部分を切り取り、除去します。

2.下地処理

下地処理
<下地処理>

補修部分とその周辺を研磨し、凹凸をなくして新しい防水層の密着を良くします。

3.清掃・プライマー塗布

清掃・プライマー塗布
<清掃・プライマー塗布>

アセトンなどで油分や汚れを拭き取り、プライマーを塗布してしっかり乾燥させます。

4.ガラスマット張り・樹脂塗布(積層)

ガラスマット張り・樹脂塗布(積層)
<ガラスマット張り・樹脂塗布(積層)>

補修範囲に合わせてカットしたガラスマットを貼り、上からポリエステル樹脂を染み込ませ、ローラーで空気を抜きながら平滑にします。

5.トップコート塗布

トップコート塗布
<トップコート塗布>

防水層が完全に硬化したら、紫外線から保護するためのトップコートを塗布して完了です。

浮きが発生する原因は様々ですが、対応を間違えると雨漏りが発生し、建物にダメージを与えてしまう可能性があります。

浮きの原因が下地の水分なのか、施工不良なのか、あるいは経年劣化なのか。

原因を正確に診断しなければ、適切な補修方法は選べません。

部分補修で済むのか、全面補修が必要なのか、あるいは、全面補修の中でも全撤去すべきか、密着工法が可能なのか。

この判断は非常に重要で、将来の安心に直結します。

ベランダや屋上のFRP防水の浮きは、建物からの重要なSOSサインです。

FRP防水の浮きを見つけたら、放置せずにまずは防水工事の専門家に相談しましょう

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ぜひお気軽にご相談ください。

カテゴリー :FRP防水  タグ:FRP防水 浮き 

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