防水塗装とは?外壁・ベランダ・屋上を守る防水工事!DIYについても解説!

近年、「防水塗装」という言葉をよく耳にするようになりました。
しかし、防水工事の専門家の立場から申し上げますと、厳密には「防水塗装」という名称の工事は存在しません。
これは、ベランダや屋上などの防水を目的とした防水工事と、建物の美観を保つための塗装工事が混同されて生まれた言葉だと考えられます。 多くの場合、防水塗装という言葉は、塗料を用いて防水層を形成する塗膜防水のことを指しているようです。
このページでは、誤解されやすい「防水塗装」という言葉の背景を解説し、ベランダや屋上を雨水から守るための正しい防水工事について、専門家の視点から防水アドバイザーの福島が詳しく解説していきます。

■福島 慎介
神奈川県出身 一般社団法人 防水工事推進協会 代表理事 防水アドバイザーとして12,000枚以上の見積りや防水工事を診断 お客様の立場・視点から分かりやすくお伝えします。
「防水塗装」とは?その実態と誤解

防水塗装とは、正式名称ではなく防水工事のことを指します。
防水工事とは雨水を遮断し、雨漏りを防ぐために行う工事のことです。
主に建物の屋根や屋上、ベランダ、バルコニーに防水施工されており、コンクリート造の建物に行われる工事で、雨漏りによる建物の劣化を防ぐことを目的としています。
「防水塗装」と呼ばれる理由と、防水工事との違い

一般的に「防水塗装」と言われるのは、塗料を塗ることで防水機能を持たせる工事、つまり「塗膜防水」のことを指しているケースが多いようです。
特に、液状のウレタン樹脂を塗り重ねて防水層を作る「ウレタン防水」は、その手軽さからDIYでも試みられることがあり、「防水塗装」という言葉が広まる一因となっています。
しかし、本来の「防水工事」は、塗膜防水だけでなく、シート防水やアスファルト防水など、より専門的な技術と材料を必要とする工事の総称です。 ベランダやバルコニー、屋上などの雨水が直接当たる箇所において、雨漏りを防ぐために行う工事全般を指します。
防水工事は、防水工事の専門業者が行っていますが、塗装会社がウレタン防水を施工することもある為、防水塗装という言葉が生まれたのでしょう。
「防水塗装」という言葉でイメージされやすい工事種類

防水塗装としてイメージされやすい工事の種類は、液状の防水材(主にウレタン樹脂)を塗布するものです。ベランダ、バルコニー、屋上など比較的狭い範囲の施工を指す意味で、防水塗装という言葉が使われることがあるようです。
防水塗装と言われている代表的な工法で、ウレタン防水があります。防水工事の中で人気が高く採用率が高い2つの工事のうち、1つがウレタン防水です。
ウレタン防水とは、液状のウレタン樹脂を複数回塗り重ねて、継ぎ目のない防水層を形成する工法です。 密着性が高く、複雑な形状の場所にも施工できるのが特徴で、戸建て住宅のベランダやバルコニーで広く採用されています。
下記のグラフの通り、防水工事見積もり.comが2019年~2024年の間に工事を行ったうち、42.8%がウレタン防水ですので、人気の高さがうかがえます。

シート防水は、施工の難易度が高く防水工事専門業者が施工していますが、ウレタン密着工法は難易度が低く、塗装会社が施工する場合があります。
その結果、防水塗装という言葉が広がった事が予想されます。
ただし「防水塗装」という言葉は、防水工事の中でも特定の工法(主に塗膜防水)を指していることが多いものの、本来はより広範な意味を持つ防水工事とは区別して考える必要があります。
防水工事業者・塗装業者・工務店の違い

業者 | 防水業者 | 塗装業者 | 工務店(リフォーム) |
---|---|---|---|
スペシャリスト | 防水工事 | 塗り(塗装) | 家作り |
防水工事 | とても得意 (防水層を作る) | 不得意 | 不得意 |
雨漏り修理 | 得意 | 不得意 | 不得意 |
塗装 | 得意 | とても得意 | 不得意 |
内装工事 | 不得意 | 不得意 | とても得意 |
防水工事、塗装、工務店(リフォーム)は全く異なる業者です。
塗装業者も「防水塗装」の施工を行うことがあるので混同されてしまいますが、防水工事において「防水塗装」は数ある防水工法の一部分です。
防水工事は専門性が高く、知識、経験、技術力が必要とされます。
DIYで「防水塗装」(塗膜防水)に挑戦するのは危険?
防水工事の専門家としては、DIYでの塗膜防水(いわゆる「防水塗装」)は、あまりおすすめできません。
仕上がりの品質と耐久性を得るためには、長年の経験と知識に基づいた、適切な下地処理、材料の選定、塗布量、乾燥時間の管理が必要です。

DIYでは、工程を適切に行うことが難しく、防水層の剥がれや早期劣化につながる可能性があります。
塗膜防水で最も重要なのは下地処理です。

汚れや旧塗膜の除去、ひび割れの補修などを怠ると、どんなに良い塗料を使っても効果は半減します。DIYでは、この下地処理が不十分になりがちです。
また、防水工事は、建物の構造や環境に合わせて適切な工法を選択する必要があります。また、塗料の特性を理解し、適切な方法で施工する専門的な知識と技術が求められます。
DIYが得意なら、ある程度の効果を得られる可能性はあります。しかし、確実な防水効果と建物の寿命を考えると、専門業者に依頼するのが賢明です。
特に、雨漏りしている場合や、雨漏りの原因となるような重要な箇所への施工は、必ず専門業者に依頼するようにしてください。
防水工事で最も重要な工程:下地作り

塗膜防水(「防水塗装」)に限らず、すべての防水工事において、最も重要な工程の一つが「下地作り」です。
下地が適切に処理されていないと、防水層の密着性が悪くなり、早期剥離や雨漏りの原因となります。
一般的な下地処理の内容は以下の通りです。
1.高圧洗浄

高圧洗浄などで、表面の汚れ、コケ、藻などを徹底的に除去します。
2.劣化した塗膜を撤去

既存の防水層が劣化している場合は、剥がしたり、研磨したりして除去します。
3.ひび割れを補修

下地にひび割れがある場合は、シーリング材などで丁寧に補修します。
4.研磨

下地の凹凸をなくし、平滑にするための作業を行います。
5.プライマー塗布

防水材の密着性を高めるための下塗り材を塗布します。
これらの下地処理を丁寧に行うことで、防水層が長持ちし、本来の防水性能を発揮することができます。
ベランダ・屋上を守る!代表的な防水工事の種類と費用目安
ベランダや屋上などで行われる代表的な防水工事の種類と、おおよその費用目安をご紹介します。

工法 | 特徴 | 耐用年数 | 単価 |
---|---|---|---|
ウレタン防水 | 複雑な形状の建物でも防水施工が可能 | 10年~15年 (密着工法は5年ほど、通気緩衝工法は15年ほど) | 5,000~7,500円 |
シート防水 | 下地を選ばずに防水施工が可能 | 12年~18年 (加硫ゴムシートは10年ほど、塩ビシートは15年ほど) | 5,000~7,500円 |
アスファルト防水 | 実績のある防水工事 | 12~18年 | 5,000~7,500円 |
FRP防水 | 耐久性に優れている | 10~12年(通気緩衝工法は13~15年ほど) | 6,000~8,500円 |
この中で「防水塗装」と呼ばれるのは、ウレタン防水とFRP防水です。
ウレタン防水は2つの工法があるため、詳しく紹介します。
ウレタン塗膜防水の主な2つの種類

ウレタン塗膜防水は主に以下の2つがあります。
- 雨漏りに最適な通気緩衝工法(別名:絶縁工法及びX-2工法)
- 初期費用が安い密着工法(別名:X-1工法)
ウレタン防水密着工法 | ウレタン防水通気緩衝工法 | |
---|---|---|
雨漏り有効度 | ★☆☆☆☆ ※雨漏り時は施工不可 | ★★★★★ ※雨漏りに有効な工法 |
特徴 | 下地の上にウレタン塗膜を施工して防水層を作る | 下地とウレタン塗膜の間に、水分を外に逃がすための通気緩衝シートを敷く |
価格相場(目安) | 5,000円~6,000円/1㎡ | 6,000円~7,500円/1㎡ |
平均寿命(目安) | 10年程度(5年~8年毎のメンテナンスを推奨) | 13年~15年(5年~8年毎のメンテナンスを推奨) |
保証 | 5年 | 10年 |
上記の表のように、密着工法と通気緩衝工法の違いは、通気緩衝シートと呼ばれるシートがあるか、ないかです。
下記に断面図を掲載します。


ウレタン通気緩衝工法は、下地に含まれる水分を脱気筒を通じて外に逃がすことができます。
この工事は難易度が高いため、防水工事業者が施工しています。
防水工事業者はウレタン密着工法で施工も行っていますが、密着工法については塗装業者も行っているため、ウレタン密着工法によって、防水塗装という言葉が生まれたのでしょう。
確実な防水工事を安く防水工事見積もり.comにご相談ください
「防水塗装をしましょう」と言われたら、本当に自分の建物に合っているのかな?としっかり考えてから工事しましょう。
「防水塗装=防水工事」ですが、雨漏りしている場合や、屋上など広い面積の場合は、「ウレタン防水通気緩衝工法」をオススメします。
ウレタン防水通気緩衝工法は、技術を要するため防水専門業者に依頼しましょう。
もし、迷ったら防水アドバイザーの福島までご相談ください。