雨漏り修理における防水工事!原因と費用、業者選びまで専門家が徹底解説
「天井にシミが…」「雨が降ると窓枠から水が垂れてくる…」
突然発生した雨漏りのサインは危険信号です。
放置すれば、建物の構造体を腐らせ、カビによる健康被害やシロアリの発生、大切な家財へのダメージなど、深刻な問題に発展します。
「すぐに修理したいけど、費用はいくらかかるの?」
「防水工事って、そもそも何をするの?悪徳業者に騙されたくない…」
そんな不安を抱えている方へ、防水工事アドバイザーの福島が、雨漏りの原因となる「防水層の劣化」から、それを根本的に解決する「防水工事」の種類と費用、信頼できる防水工事業者の選び方まで解説します。
■福島 慎介
神奈川県出身 一般社団法人 防水工事推進協会 代表理事 防水アドバイザーとして12,000枚以上の見積もりや防水工事を診断 お客様の立場・視点から分かりやすくお伝えします。
雨漏りを防ぐ「防水工事」とは?修理との違いと仕組み

「雨漏り修理」と「防水工事」の違いは、雨漏りを止める応急処置をするか、雨漏りを止めるだけでなく雨漏りの侵入を防ぐ工事をするかの違いです
- 雨漏り修理
雨水の浸入口を特定し、コーキングなどでピンポイントに塞ぐ応急処置に近い作業 - 防水工事
建物全体をレインコートのように覆う「防水層」を新たに作り直し、雨水の侵入を根本的に防ぐ工事
部分的な修理で一時的に雨漏りが止まっても、原因である防水層全体の劣化が解決されなければ、いずれ別の場所から再発する可能性が非常に高いのです。

防水工事の基本は、建物のコンクリート下地などの上に、複数の層を重ねて強固な防水層を形成することです。

具体的には、下地と防水材の密着性を高める「プライマー(下地処理剤)」を塗り、主役である「防水材」で遮水層を形成し、最後に紫外線や摩耗から防水層を守る「トップコート(保護材)」で仕上げます。
これらの層が一体となって、初めて長期的に建物を守る防水性能が発揮されるのです。
防水層の劣化が雨漏りの原因に!今すぐチェックしたい5つのサイン

屋上やベランダに施工されている防水層は、紫外線や雨風、温度変化に常にさらされ、時間とともに必ず劣化します。劣化は以下のような症状があります。
- ひび割れ(クラック)
- 塗膜の膨れ
- 剥がれ・めくれ
- 浮き
- 目立つ傷
ご自宅の屋上やベランダに以下のような症状がないか、一度セルフチェックしてみてください。
早期発見が、建物を守り修理費用を抑える鍵となります。
これらのサインは、防水層が限界に近いことを示しています。
以下、それぞれの症状がなぜ危険なのかを詳しく見ていきましょう。
【サイン1】防水層のひび割れ

塗膜のひび割れは、経年劣化や地震などの揺れによる建物の動きが主な原因です。
特に、防水の弱点となりやすい建物の接合部分や屋上の端部、排水口(ドレン)の周りによく見られます。
髪の毛ほどの細いひび割れ(ヘアークラック)でも雨水を吸い上げてしまいます。
放置すれば、ひび割れは内部で拡大し、構造部分にまで水が浸透して大規模な雨漏りへと繋がる非常に危険なサインです。
【サイン2】防水層の膨れ

防水層が水風船のようにプクッと膨れている症状です。
これは、防水層の下に侵入した水分が、太陽熱で温められて水蒸気となり、逃げ場を失って防水シートを押し上げることが主な原因です。
膨れている部分は、下地から完全に剥離しており、防水機能は失われています。
いつ破れてもおかしくない「時限爆弾」のような状態であり、高い雨漏りリスクを抱えています。
【サイン3】防水層の剥がれ・めくれ

防水層が文字通り剥がれたり、めくれたりしている状態です。
強風や紫外線による劣化、施工時の接着不良などが原因で発生する、劣化の末期症状と言えます。
防水層がめくれている部分は、建物の下地(コンクリートなど)が剥き出しになっており、雨が降れば直接水が浸入してしまいます。
この症状を発見した場合は、一刻も早い業者への相談が必要です。
【サイン4】防水層の浮き

防水層と下地の接着が弱まり、部分的に浮いてしまっている状態です。
膨れと似ていますが、より広範囲で密着性が失われています。
施工時の下地処理の甘さや、経年による接着力の低下が原因です。
浮いた部分から雨水が浸入し、防水層の下を広範囲にわたって移動するため、雨漏りの原因特定が困難になるケースもあります。
【サイン5】防水層の目立つ傷

室外機の設置作業や落下物、鳥のついばみ(特にシート防水)など、物理的な要因で防水層に傷がつくことがあります。
小さな傷でも防水層を貫通していれば、そこが直接的な雨水の浸入口となります。
特に、人が頻繁に歩行するベランダや、屋上に物を置いている場合は注意が必要です。
傷の大きさや深さによっては、即座に雨漏りにつながる危険性があります。
雨漏りを確実に止める!信頼できる業者が行う防水工事の流れ
雨漏りを止める防水工事は、正しい5つの手順を踏むことが極めて重要です。
STEP.1:【最重要】建物の現状調査と原因箇所の特定
STEP.2:下地処理
STEP.3 通気緩衝シート貼り・脱気筒設置(通気緩衝層の形成)
STEP.4:防水層の施工
STEP.5:施工箇所の仕上げ(トップコート塗布)
STEP.6:定期的なメンテナンス
それぞれの工程がなぜ重要なのか、1つずつ解説していきます。ここではウレタン防水密着工法の流れをご紹介します。
STEP.1 【最重要】建物の現状調査と問題箇所の特定

雨漏りは、必ずしも一つの原因で起きているとは限らず、プロでも断定が難しいケースが多くあります。
防水工事で重要なのは、考えられる原因を幅広く把握し、それぞれに対応できる提案ができる業者かどうかであり、これが工事結果を大きく左右します。
経験豊富な業者は、建物の構造を理解した上で、雨水の浸入経路を正確に突き止めるための調査を行います。
・目視・打診調査

表面の劣化状況や浮きの有無を確認します。
・含水率測定
・散水調査

雨漏りが疑われる箇所に水をかけ、室内への漏水を再現して原因を特定する確実な方法です。
・赤外線サーモグラフィー調査

建物の温度差を可視化し、内部に水分を含んでいる箇所を特定します。
これらの専門的な原因調査の結果をもとに、雨漏りの有無や劣化状況に合わせた最適な防水工法と、必要な補修範囲を決定します。
STEP.2 下地処理

下地処理は、防水工事の品質を左右する非常に重要な工程です。
どんなに高価で高性能な防水材を使っても、この工程を疎かにすると数年で剥がれてしまいます。
・高圧洗浄

既存の汚れ、コケ、古い塗膜などを徹底的に洗い流します。
・ケレン作業

剥がれかけた塗膜やサビなどを工具で除去します。
・ひび割れ・欠損補修

ひび割れをU字にカットしてシーリング材を充填するなど、下地のダメージを補修します。
・プライマー塗布

新しい防水材と下地の密着性を高める接着剤の役割を果たす塗料を塗布します。
この工程をどれだけ丁寧に行うかが、職人の腕の見せ所であり、防水層の寿命を大きく左右します。
STEP.3 通気緩衝シート貼り・脱気筒設置(通気緩衝層の形成)
通気緩衝工法の特徴がこの工程です。

既に雨漏りをしている物件にウレタン防水を施工する場合、通気緩衝シートの設置が必ず必要になります。

既存下地からの水蒸気を逃がすための「通気シート(通気緩衝シート)」を貼り付け、さらに水蒸気を外部に排出するための脱気筒を設置します。
これにより、下地内部の湿気が防水層を押し上げる「膨れ」や「浮き」を防止し、長期的に安定した防水性能を維持できるようになります。
STEP.4 防水層の施工

いよいよ防水層を形成していきます。
選択した防水工法(後述)に応じて、メーカーが定めた規定の工法・手順を遵守することが絶対条件です。
- 適切な膜厚の確保
防水材を規定の厚みで均一に塗り重ねます。
薄すぎると防水性能が発揮されません。 - 乾燥時間の厳守
各層の間で、塗料が完全に乾くための十分な乾燥時間(養生期間)を確保します。 - 端部・立ち上がり部の処理
雨仕舞い(あまじまい)で最も重要となる壁との境界線などを、メッシュシートなどで補強しながら丁寧に施工します。
施工日の気温や湿度も品質に影響するため、防水工事業者は常に施工環境を管理しながら作業を進めます。
STEP.5 施工箇所の仕上げ(トップコードなど)

防水層を保護し、美観を整えるための仕上げ作業です。
・トップコートの施工
防水層の表面に、紫外線や摩耗から守るための保護塗料(トップコート)を塗布します。
・端部処理・シーリング

防水層の端を金物で固定したり、設備まわりの隙間をシーリング材で埋めたりします。
・排水口周りの処理

排水口(ドレン)が詰まらないよう、改修用ドレンを設置するなどの処置を施します。
特に、防水層を紫外線から守るトップコートは非常に重要で、これがあるかないかで防水層の耐久性が大きく変わります。
STEP.6 定期的なメンテナンス

長期的に防水性能を維持するためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。
防水工事は「やったら終わり」ではありません。
- 定期点検
施工業者による1年、3年、5年といった定期点検で、防水層の状態を確認します。 - 排水溝の清掃
落ち葉やゴミが排水口を塞ぐと、雨水が溜まり雨漏りの原因になるため、定期的な清掃が重要です。 - トップコートの塗りなおし
一般的に5年~10年を目安に、防水層を保護しているトップコートの塗り替えを行うことで、防水層本体の寿命を延ばすことができます。
多くの業者では、工事に「保証」がついていますが、この定期メンテナンスが保証の条件になっていることもあります。
メンテナンス計画まで含めて提案してくれる防水工事業者を選びましょう。
雨漏りを止める防水工事の種類と費用相場
防水工事にはいくつかの種類があり、建物の場所(屋上、ベランダなど)や既存の防水層の状態、予算によって最適な工法が異なります。
ここでは代表的な4つの工法と、それぞれの費用相場をご紹介します。
| 工法名 | 特徴 | 主な施工場所 | 耐用年数(目安) | 費用相場(/㎡) |
|---|---|---|---|---|
| ウレタン防水 | 液状のウレタン樹脂を塗り重ねる工法。複雑な形状にも対応しやすく、国内で最も一般的な工法。 | 屋上、ベランダ、バルコニー | 10~15年 | 5,000円~7,500円 |
| シート防水 | 塩化ビニルやゴム製のシートを貼り付ける工法。広い面積を均一に施工できる。 | 広い陸屋根の屋上 | 10~18年 | 6,000円~7,500円 |
| FRP防水 | ガラス繊維で強化したプラスチック(FRP)で防水層を形成。軽量で強度が高く、硬化が速い。 | 木造住宅のベランダ、バルコニー | 10~15年 | 6,000円~8,500円 |
| アスファルト防水 | アスファルトを含んだシートを貼り重ねる伝統的な工法。信頼性が非常に高い。 | 鉄筋コンクリート造の陸屋根 | 10~30年 | 5,000円~15,000円 |
※上記費用はあくまで目安です。
下地の劣化状況や施工面積、建物の状況によって変動します。正確な費用は必ず専門業者に見積もりを依頼してください。
なぜ?防水工事後にも雨漏りが再発する2つの原因
「高い費用をかけて工事したのに、また雨漏りが…」
そんな最悪の事態は避けたいものです。
工事後に雨漏りが再発する原因は、大きく分けて2つ考えられます。
原因1:防水工事の手抜き・施工不良

残念ながら、防水工事における不適切な施工(いわゆる手抜き工事)は存在します。
その多くは意図的な省略というより、技術や知識の不足によって適切な判断ができていないことが原因です。
具体的には、
- 既存防水層が塩ビシートであるにもかかわらず、適合性を検討せずにウレタン防水を施工してしまう
- ドレン(排水口)の設置・改修を行わない
- 立上り部や取合い部で必要な入隅・端末処理を省略する
- 下地処理(清掃・調整・補修)を十分に行わない
といった事例が見受けられます。
価格の安さだけで業者を選んでしまうと、こうした判断ミスや工程不足に気づきにくく、結果として不具合につながるリスクが高まります。
このような不適切な施工を防ぐために重要なのは、業者選びの視点です。
・見積書を詳細にチェックする

・工事中の写真報告を依頼する
見えなくなる下地処理や各工程の写真を撮ってもらうことで、手抜きを抑制できます。
・複数の業者から相見積もりを取る
極端に安い見積もりには理由があります。価格だけでなく、工事内容と保証内容をしっかり比較検討しましょう。
防水工事は、費用だけで判断すべきものではありません。
過度な価格競争が続くと、技術や知識が十分でない業者でも仕事を受注しやすくなり、選ばれるために本来必要な工程を削って価格を下げるケースが出てきます。
その結果、施工品質が犠牲になり、不具合につながるリスクが高まる構造が生まれやすくなります。
原因2:自然災害による新たなダメージの発生

完璧な防水工事を行っても、想定を超える自然災害によって新たなダメージが発生することがあります。
例えば、台風による飛来物で防水層が傷ついたり、地震による建物の歪みで新たなひび割れが発生したりするケースです。
このような自然災害による損傷には、火災保険が適用される可能性があります。
重要なのは、「経年劣化による雨漏りは対象外」で、「台風、強風、雹(ひょう)、積雪など、自然災害が原因の破損」が対象となる点です。
もし災害後に雨漏りが発生したら、すぐに保険会社と防水業者に連絡し、被害状況の写真を撮っておきましょう。
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雨漏りは放置するほど被害が広がり、構造体の腐食やカビの発生だけでなく、修理費用も大きく膨らみます。
また、正しい調査と適切な防水工事を行わなければ再発のリスクが高く、専門的な知識と技術が欠かせません。
「どの工法が合うのか」「見積もりは適正なのか」など、判断が難しいポイントも多いため、信頼できる業者に依頼することが非常に重要です。
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